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「おぉ真、こっちの台詞だよ。おまえも、まだ帰んないの?
ていうか、どこほっつき歩いてたんだよ。帰るなら帰るで連絡、どっか行くなら報告____そんぐらい常識だろ。
あんまり、心配させんなよ〜?」
「いやぁ、ランニングしてたら【ちょっと面倒なひと】に絡まれちゃってさ。どうにか振り切って、逃げてきたんだよ。
あぁ、生きた心地がしなかった!」
真のことばに、美羽は目を鋭くする。
「もともと、今日から泊まりこむつもりだったんだ。いちど家に戻って、布団とか非常食とかもってくるつもり。
『S1』までは、この防音練習室で毎晩過ごすんだ〜♪」
「泊まりこむ、って......。まあ、俺も泊まりこむつもりだったし、校則違反ではないから、別にとめないけどな。
防音練習室は24時間、俺たち『Trickstar』の貸しきりだし」
そうだよな? と聞くように真緒に見られて、美羽は首肯する。
そのあたりの手続きは滞りなく行っている。
「気合が入ってるな、真。そんなんじゃ『S1』まで体力もたないぞ、抜くとこは抜かないと。
まぁ、こんな遅くまで居残ってる俺が言えたことじゃないけど」
「あはは。大神(おおがみ)くんとの特訓で、それなりに体力がついたから大丈夫。
それでも朝霧先輩には指摘されたから、それも兼(か)ねてたんだけど。
僕はそのぐらいしないと、みんなに置き去りにされちゃうしね〜?」
真緒が予想していたとおり、真はすこし思いつめてしまっているようだ。
遮二無二(しゃにむに)努力して、実力も才能も並外れている他のみんなに追いつこうとしている。
けれど悲観的ではなく、それが楽しいみたいにも見える。
一生懸命になって、尊敬できる仲間たちとともに戦うために全力を尽くす。
そういうことが、この上なく嬉しいようだった。
「それにちょっと、学校に泊まるなんて部活の合宿みたいで楽しいじゃない。そういうの憧れてたんだ〜、青春っぽいでしょ?」
「そっか。じゃあふたりで泊まるか、こんなとこで独りぼっちじゃ寂しいだろ?」
「平気だよ、ちっちゃい子供じゃないんだから。僕、家族とうまくいってないからさ......。
家に帰っても息苦しいし、ここで寝泊まりするほうが気楽なの」
「いや、ただ単に俺が寂しいんだよ。俺も泊まる予定だったし。
あと、おまえちょっとブレーキ壊れてるところがあるからな、誰かがそばで見守っとかないと」
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作者名:白銀桜夢 | 作成日時:2018年8月9日 18時