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「『どうぞ』と言われても、困る」
スバルにいつものようにまとわりつかれて、以前の北斗ならば無表情に突っぱねていただろうけれど____
彼も2週間で、変わった。
調子よく、合いの手を入れている。
「漫才は、やらん。面白すぎて思い出し笑いをして____お前らが今晩、眠れなくなってしまう可能性が高い」
「あはは。なにそれ面白いっ、ホッケ〜の冗談は冴え渡ってるね☆」
「冗談ではない。ともあれ明日に備えて、結束を固めるため何かしておくのも悪くはないな
____円陣(えんじん)を組もう、みんな」
スバルを軽やかにいなして、北斗がみんなを手招きする。
「明星。衣更。遊木。先輩も、」
促されるまま、みんなで円陣を組んだ。
美羽も、求めに応じた。
肩を寄せあい、頭の天辺(てっぺん)を互いにぶつけあうようにして。
そこには宇宙の始まり____ビッグバンの熱量と、輝きがある。
そこから大量の奇跡が、すべてが生まれていくのだ。
一人一人を抱き寄せるようにして、熱を共有する。
愛おしい、人肌のぬくもりだ。
青春、そのものだ。
「明日は、必ず勝つぞ」
「当然！ そのために、努力してきたんだしね〜☆」
「がんばろうね、生徒会に一泡吹かせてやろう！」
「やっぱ、ワクワクすんな〜。久しぶりのライブだし、俺はふつうに楽しんじゃう予定♪」
北斗が、スバルが、真が、真緒が____それぞれの決意を表明する。
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「ふむ。決戦前夜じゃというのに、賑(にぎ)やかじゃのう？」
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不意に、声が響いた。
「死地を前にして笑えるとは、頼もしい限りじゃ。くっくっく♪」
それは『Trickstar』をこれまで教え、導いてくれた恩人____『三奇人』朔間零である。
かなり唐突に出現したけれど、いつものことなので、全員だいぶ慣れてきている。
いちばん怖がりの真でさえ、ほっこり笑顔で挨拶していた。
「あっ、朔間先輩。この防音練習室、ちゃんと施錠(せじょう)していたのにどっから入ってきたの？」
「我輩は吸血鬼じゃからのう、施錠など無意味じゃよ。なぁんての、むかし『やんちゃ』だったころにつくったマスターキーがあるのじゃよ」
指先でそのマスターキーらしきものを「くる、くる」と回転させている、零である。
ほんとうに底知れない____恐ろしいひとに、師事(しじ)してしまった。
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作者名：白銀桜夢 | 作成日時：2018年8月9日 18時
