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その頃、美羽はというと......。
「あれ？ 美羽じゃん、久しぶりだね〜。元気だった？」
夢ノ咲学院の食堂____ガーデンテラスにて、ナンパ？ というより、チャラい男に絡(から)まれていた。
「......【薫くん】」
どうやら顔見知りのようだ。
彼の名前は、羽風(はかぜ)薫(かおる)。
学年は美羽と同じ3年生、しかし学級はA組。
黄金を融(と)かしたような、男性にしては長めの髪。
そして、綺麗なアメジストの瞳。
海洋生物学部所属、所属『ユニット』は『UNDED(アンデッド)』。
夢ノ咲学院の制服を、だらしなく見えない程度に着崩す彼は、かなりの女好きだ。
「ちょっとちょっと、【くん】付けはやめてよね。急にどうしたの？」
「あなたこそ、私になにか用？」
「質問を質問で返さないでよ......まぁいいや。用は特にないよ？ 俺の勘が、俺をここまでつれてきたの」
それ以上は入らせないように、美羽は薫の質問に答えず、逆に質問をする。
そんな彼女にすこし困惑しながらも、質問に答え、それ以上は踏みこまない彼。
そういうところが、(たぶん)彼のいいところなのだろう。
「ん〜、じゃあ違う質問。美羽ちゃんはどうしてここにいるの？」
「......秘密よ」
チラリと彼の心理をよもうとする美羽だったが、やはりよめない。
胡散臭い笑顔で傍に寄ってくる彼に冷たく返す。
「お堅(かた)いな〜」
しかしそんなことではめげないのが薫だ。
「それにしても、本当に来てたんだね。朔間さんから聞いてさ、こうして会いに来たんだよ〜♪」
嬉しそうに、薫は陶酔(とうすい)するみたいに大袈裟に我が身を抱き寄せる。
獲物を狙う、捕食者____肉食獣のようだ。
暴力的な気配はないけれど、それでもどこか危険な雰囲気。
反応しない彼女に向けて、薫はにこやかに、ペラペラとひとりで語る。
「相変わらず、かわいいよね！ まったく、学校に来てること、もっと早く教えてくれればいいのに。朔間さんも美羽ちゃんもさ。
俺はずっと、そんな朗報を待ってたのにさ！」
彼女が停学になる前までは、それなりに良い仲だったのだろうか。
「まあ、すこしキャラは変わってるけど......。【今の】美羽ちゃんも素敵だよ？」
【今の】......その言葉に、美羽はキッと薫を睨みつける。
彼女の地雷。
踏みこまれたくない、領域。
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作者名：白銀桜夢 | 作成日時：2018年8月9日 18時
