思い馳せる姫君 (ページ32)

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「しかしじゃ、我輩をその気にさせる『輝き』をおぬしらが見せてくれるのなら、やぶさかではないがのう？」

「輝き...」

真が困ったように眉を下げて呟いた。

「これは、あなたたちの初めの試練よ」

　Aが静まり返った空気のなか、静かに言った。

「魔物を退治した勇者には、加護と武器が与えられる。苦難に切り開き、未来へ進むための力を得られる。

　それを望むのなら、踏み出してきなさい。勇敢に、挑んでくれば良いわ」

　余裕綽々と。

「最初の一歩を踏み出さなければ、坊やはいつまでたっても坊やのままよ。勇者にはなれないわ。

　何も得られず、野垂れ死ぬだけ」

「おぬしらには期待しておるのじゃよ、未来ある若者たちよ。どうか、我輩のまだ知らぬ輝かしい未来を見せておくれ......♪」

　2人の言葉に彼ら____Trickstarは、運命の渦中へと身を投げる。

「うがあああああ！」

　神秘的(？)な雰囲気すら漂い始めていた軽音部部室に、すべてを引っ掻き回すような騒音が響いた。

「うるさいわよ、晃牙くん」

　そう、この騒音の出所は晃牙であった。

「おや、わんこ。自力で脱出するとは、成長したのう...♪」

「テメ～っ、好き放題にしやがって！何を考えてんだコラァ、もう我慢できね～ぞ！ぶっ殺～す！

　Aもこいつの言うことなんか聞かなくてい～んだよ！！」

　怒りで我を忘れて怒鳴り散らす晃牙など気にもとめず、彼が千切り解いた縄をAが処理する。

「先輩を呼び捨てにするのはやめなさいといつもいってるでしょ。当然だけど、零に向かって『テメ～』も言ってはいけないわよ」

「吸血鬼ヤロ～はどうでも良いんだよ！

　それにA！【今の】オメ～には絶対先輩なんて使わね～かんな！！」

(【今の】...？)

　2人のやり取りで、北斗は引っ掛かりを覚えた。

「知らないの？」

「あぁ？」

　Aの纏う空気が変わった。

「【歳月は、人を変える】のよ」

凍てつくような声のトーンに晃牙は____いや、Trickstarの3人も____体を強張らせた。