毒と棘 2【狗巻棘】

立場 ページ16

そこには疲弊しきった憂太が居た。
怪我もしている。

A＞憂太、それ…

乙骨＞A、来てそうそう悪いんだけど
夏油を追ってくれ。奥の角を右だ。
僕は…走れるほど体力がない。

A＞怪我は大丈夫なの？

乙骨＞うん、自分で家入さんのとこには行ける。

A＞分かった、行ってくる。






いつもの憂太の口調じゃない。
それに、リカちゃんも前とは比にならない位、
おぞましい…

きっと、無理して夏油と戦ったんだな。
それに比べて私は…





ダメ。…反省は後で、いくらでも出来る。

私は今、やるべきことをする。









A＞夏油！！！

夏油＞…上手く撒いたと思ったんだけどな。

A＞1つ聞きたいことがあるの。

夏油＞なに？

A＞…どうして非呪術師を憎むの？
私は、呪術師が嫌い。
呪力の有無で優劣を決めるあいつらが、嫌い。

夏油＞勿論、最初は何とも思わなかったよ。
「ありがとう」って言われたら嬉しいしね。
でも段々と…非呪術師の、弱者の、尊さ、醜さの
分別と受容が出来なくなった。
何の為に私はクソまずい呪霊を呑み込んで、
戦っているんだろう、
何の為に私はこいつらを助けているんだろう、てね。

A＞…まぁクソみたいな人間は山ほどいるよね。

夏油＞Aは、呪力の有無で…と言ったが
人間に至っては、性別、顔、富、才能…
と言いきれないほど優劣をつけるよね。
呪術師の方がよっぽど単純だ。

A＞…そうだね。

夏油＞理解出来ないだろうね。生き方も、環境も、
何もかも違うんだ、
分かるはずがない。

A＞うん、分からない。分からないよ。
でもだからって、人を沢山殺したからって、
はい、殺しますとは、私はならない。
私は、それ程社会に順応してる人間じゃない。

夏油＞…うん。

A＞正直夏油が何人人を殺そうが私には
関係ないしどーでもいい。
でも、私の大切な人を傷つけた。
私は私利私欲の為に夏油を殺すよ。

夏油＞…うん。Aになら殺されても悔いはなさそうだ。

A＞何言ってんの…

夏油＞A、ありがとう。最後に話せたのが
君で良かった。









殺すよ、夏油。
最大限、苦しまないように。









「雪…」








．









「A、待って。」









．








．









A＞五条先生…

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