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｢オレにはオレの使い道があったんだが、そういう話ならこれはお前にやるよ。｣
大事に使ってくれよな、と言いながらカミュはズイッ、とレッドオーブを勇者へと差し出す。
それを受け取っていると、ロウも袋をゴソゴソと何かを探し出した。
｢ロウ様。売らなくて正解でしたね。仮面武闘会でもらった、そのオーブ。｣
｢うむ。あやうく真の価値もわからず、路銀にかえるとこじゃったわい。｣
ロウが手に入れていたイエローオーブも、孫の手に渡った。
｢…王族って、国宝とか簡単に金に変えちまうのかよ。｣
｢それはサマディー国王だけじゃて。｣
｢……棚に上げたな、ロウ爺。｣
なんの事やら、と笑うロウに、ゼクは好々爺が、と毒づく。
｢6つのうち、奇しくも2つは手元に揃ってるな。｣
｢残り4つのオーブ……でもいったい、どこから探せば……｣
｢オーブと言えば、子供の頃海底に沈んだオーブがあるって聞いたけど、そんなの雲を掴むような話だしね……｣
｢パープルオーブなら、場所が分かる。｣
ゼクの発言に皆の視線が集まる。
その視線には、どこに！？、の意味が込められている。
｢バンデルフォンだ。｣
｢え…だけど、ゼク。バンデルフォンって｢ま、在処は分かってても特殊な鍵が施されてるからな。後回しだろーな。｣
カミュが何か言いそうになったのを、ゼクは遮って黙らせた。
｢とにかく、今は手がかりがない。｣
｢そうだね、世界を回って情報を集めないと。｣
｢うむ。世界中をくまなく回るにはまず、ソルティコの町にある水門を抜け外界へ出るのがいいじゃろう。｣
｢ソルティコ、か……｣
ゼクは呟き、無意識にシルビアへ視線を向けていた。
シルビアは目を伏せている為、視線は合わない。
シルビアの隣ではセーニャが、ゼクの隣ではカミュが見ていることに2人は気づいていない。
｢幸い、ソルティコの町にはジエーゴという知り合いの領主がおる。わしが頼めば、こころよく水門を開けてくれるじゃろうて。｣
目的地が決まり、一行は勇者のルーラでダーハルーネへと舞い戻った。
───
シルビアの船も、ダーハルーネへ戻っていたらしくすぐに一行はソルティコへ向けて出港した。
｢ゼク。｣
｢んー？｣
｢ソルティコってところで、シルビアのおっさんとなんかあったのか？｣
｢んだよ、気になんのか？｣
海を眺めていたゼクの隣にやってきたカミュが、そう聞いてきた。
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作者名：春月是駒 | 作成日時：2023年4月1日 23時
