ソルティコ ページ49
｢聞いても教えてはくれねぇだろうけどな。｣
ムスッ、として手すりに背を預けた。
｢カミュにはねーのか？言いたくない過去。｣
｢……ある。｣
視線をあらぬ方へやったまま、カミュは言えぬ過去の存在を認める。
｢そーゆーことだ。……お前には尚更、言えねーよ。｣
最後の呟きは波音が攫っていき、カミュには届かなかった。
何か言ったか？、と振り返ったカミュに、いんや？、と誤魔化し体を伸ばす。
｢……知ってるようでオレ、ゼクのことあんまり知らねぇな。｣
｢お互い様だろ。まー…俺しか知らねーカミュがいるのは、嬉しいけどな？｣
クツクツ、と笑いながら言えば、カミュは覗き込んできたゼクの頭をグーで殴った。
照れ隠しと思えばそれすら可愛い、と思える時点で末期だなー、とゼクは苦笑するのだった。
───
ソルティコの町に着くなり、シルビアが不自然に口を開いた。
｢あ！アタシ、ちょっと花摘みしてくるわ。あっちにキレイな花畑があったのよ〜。町の外で待ってるから、終わったら呼んでね。｣
語尾にハートを付けて、シルビアは足早に来た道を引き返して行った。
｢いったい、どうしたのかしら。シルビアさんったら、急に……｣
｢さーな？流石に町の外に1人はマズイだろーし、俺が着いてくわ。｣
｢放っとけよ、ゼク。｣
｢そーもいかねーだろ？一応、レディーだしな。｣
いつもなら放っておくゼクが、シルビアを優先するのがカミュは気に入らなかった。
勝手にしろよ、とゼクに背を向けた。
機嫌の悪いカミュをそのままに、ゼクは踵を返しシルビアを追いかけた。
───
｢なんだ、ゼクちゃん。あなたも来ちゃったの？｣
｢ゴリアテ、不自然すぎるっつーの。｣
バカかよ、と浜辺に座り込むゴリアテの頭をパシン、と叩いた。
痛い、と文句が飛んでくるが、ゼクは構わず隣に腰を下ろした。
｢…なんで来たのよ。カミュちゃんに怪しまれるわよ？｣
｢絶賛怪しまれ中だ、おかげで機嫌がすこぶる悪い。｣
｢放っておいてくれていいのに…｣
｢そーもいかねーの。…ちゃんと、ケジメつけねーとさ。｣
優しい海風がサーッ、と2人の間をかけ抜ければ赫と黒が風になびいた。
｢勝手に飛び出してちゃって、ゴメンなさいね。｣
｢ホントな。まー、応援してたんだよ。お前から夢聞かされて、お前らしーって思ってな。｣
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作者名：春月是駒 | 作成日時：2023年4月1日 23時
