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余裕そうなデスコピオンに、一行はひたすら攻撃と回復を繰り返す。
あと少し、という時にデスコピオンは最後のあがきのように大鎌を振り上げた。
その先にはカミュがいて、思わずゼクが走り出す。
「カミュっ!」
だが大鎌を振り下ろされたカミュは、ゼクの目の前で倒れた。
大鎌の持ち主をゼクは睨みつければ、怒りが口元に現れギリギリと歯を食いしばる。
「カミュ!」
「セーニャ!回復よ!」
「はいっ!」
「……くぉんのっバカサソリがーッ!」
カミュをセーニャ達に任せ、ゼクはデスコピオンに体を向ける。
カミュの剣を頭上へ振り上げる。
「気炎……」
ダンッ、と踏み込んでそのままデスコピオンの頭までゼクは飛び上がった。
「万象ーっ!」
炎の刀身をゼクは、デスコピオンへと振り下ろしそのまま重力に従い地面まで落下する。
耳障りの悪い声を上げてデスコピオンは、砂に倒れ込み沈黙した。
「カミュさま!」
「つっ……砂漠の殺し屋は…?」
背中に聞こえた声にゼクは、カチン、と剣を納めながら振り返った。
「ゼクが倒してくれたよ。」
「そうか……」
「何がそうか、だ。……バカヤロー。」
盗賊の傍に寄れば、バツが悪そうにゼクに笑って見せた。
ゼクと入れ替わるように、旅芸人がデスコピオンを縛り上げに向かった。
騎士の背後では、王子が自分の手柄として王に報告することを兵士に命じており、勇者一行は呆れるしかなかった。
デスコピオンを荷車に乗せ鎖で拘束し終えた王子一行は、一足先に城へと帰って行く。
もちろん、礼を述べ虹色の枝の件を掛け合うことを約束してである。
その際、シルビアと何やら言葉を交わしていたがゼクの耳には雑音として届いていた。
「これで正しかったのか、わからねぇな。」
カミュはゼクの手を借りて、立ち上がった。
しっかり立ち上がったのを見てゼクは、咄嗟に借りた剣を元の場所に戻す。
小さくサンキュ、と騎士が礼を添えれば、おう、とぶっきらぼうに盗賊は言葉を返される。
「あのヘタレ王子、このままだと何も変わらねー気がするぜ。」
「俺も。/僕も。」
「でも、あの子は今の自分に満足してない。」
「んだよ、要はきっかけが必要ってか?」
「もしかしたら、化けるかもね……」
そう言ってシルビアは、去っていった。
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年4月1日 23時