バンデルフォン地方 ページ22
「バンデルフォン着いたら、時間あればデートするか?しゃれたスポットなんてねーけど。」
「しねぇよ!バッカじゃねぇの!」
クツクツ笑うゼクに噛み付くカミュだったが、露出してる耳が赤かった。
朝日のせいには出来ない。
───
船室でゆっくりしているゼクの下に、イレブンが顔を出す。
「ゼク、着いたって。早くしないとシルビア、ゼクの事抱きしめるって言ってたよ。」
「……なんか恨みでもあんのかよ、あんにゃろー。」
分かった、とイレブンに伝え履きなれた靴を履き、装備を整える。
道具袋の確認をしていると、過去の遺物が出てきた。
共に国に尽くそう、と3人で誓いを立てた時の、揃いの腕輪だった。
ゼクの手の中で、紫と金色の宝石が陽の光で輝いている。
「……どこで道を違えたんだよ、バカヤロ共。」
感傷に浸っていると、廊下からゼクちゃ〜んまだかしら〜?、と急かす声が聞こえてきた。
やっべ!、と慌てて腕輪を道具袋へしまい込み、シルビアの抱擁を回避すべく乱雑に扉を開けて廊下を駆けた。
「ゼク、遅いわよ!レディーの私より遅いなんて、どうかしてるわ!」
「まぁまぁ、お姉さま…」
「ゼク、なんかあったのか?」
船室でのカミュはなりを潜めているのか、いつも通りの盗賊がそこにいたことに、安堵しつつ何も無い事を伝える。
「ゼクちゃん、はい!」
「あ゛?」
「も〜、ハグよハ・グ!」
「寝言は寝て言ってくれ?」
「や〜ねぇ!寝言じゃないわよ〜!」
そう言ってシルビアは自らゼクを抱きしめた。
やめろ、離れろ、と抵抗するも、抑え込まれゼクはシルビアの気が済むまで拘束された。
イレブンは南無三と合掌し、双子は苦笑っている。
ただ、カミュだけはどこか羨望の眼差しでシルビアを見ていた。
「あ〜抱き心地最高ね!」
「こんの…肩に顎置きやがって、刺さってたぞ!」
「ゼクとシルビアって、仲良いよね。」
大の大人がぎゃいぎゃい騒いでいるのを眺めながら、イレブンは隣のカミュに言った。
肯定せざるを得ない光景にカミュは、ああ、とだけ言って先に船を降り始めた。
「ほら、2人とも行くわよ!」
「はいは〜い!」
「誰のせいだよ、誰の!」
勇者一行は、どこにいてもやかま……賑やかである。
そんな一行がバンデルフォン地方に降り立ちました。
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年4月1日 23時