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「……っ、移ったじゃねぇかゼク。」

「見てるからだろ。」


犯人は、青髪の盗賊だった。
そのやり取りを皮切りに、まだ起きていなかった3人が目を覚ました。
身支度を整えている間に、王子一行は先に目的地へと出発したようだった。


「遅れてもマズイな。イレブン、ヘタレ王子に追いつくぞ。」

「そうだね、急ごう。」


一行は足早に、先行する王子一行を追うのだった。


───

砂漠地帯の袋小路と言うような場所に、魔蟲の棲家はあった。
だが、どこを見ても件の魔物の姿は見当たらない。


「この辺りにいるはずなんですが……」

「なんだ、どこにもいないじゃないか。仕方ない。砂漠の殺し屋は、ボクを恐れて逃げたと父上に報告するとしよう。」


そんなはずは一切なく、王子一行と勇者一行の間に砂漠の殺し屋もといデスコピオンが砂中から姿を現した。
それを見た王子は、腰を抜かし尻もちを付いて後退る。


「さあ!サソリちゃんのお出ましよ!騎士の国の王子さまらしいところを、見せてあげて!」


シルビアはそう言うが、王子は完全に怖気付いている為震えて無理だと根をあげるしか出来ないでいた。


「だーもーっ!仕方ねーなっ!兵士共!王子を頼むぞ!」

「さあ!イレブンちゃん、行くわよ!」


その声で各々が戦闘態勢をとる。
先制を取ったのはカミュで素早くヴァイパーファングを使うが、デスコピオンは見た目通りに硬いようでダメージは愚か毒のプレゼントさえも出来なかった。


「ちっ、硬ぇ!」

「ベロニカ、お願い!」

「任せて!」


すかさずベロニカが呪文を唱え、硬さを一時的に取り除いた。
だが、その時に隙が生じてデスコピオンの攻撃が彼女を襲った。
回復の為にセーニャが動くが、詠唱がある為すぐには動けないでいた。


「カミュ!剣貸せ!」

「お、おいっ!」


後ろで待機していたゼクが、盗賊の腰から追い抜きざまに剣を抜き取った。


「心眼……一閃っ!」


デスコピオンの胴目掛けてゼクは、神速の居合を繰り出すが急所を外した。
その後ろでセーニャは、ベロニカに回復を施している。
イレブンも大剣で応戦している。
やられてたまるか、とばかりにデスコピオンが暴れ終わったかと思うと背中の文様が光った。
それを見てしまったゼクが、混乱してその場から逃げ出そうと背を向けて走り出した。


「敵前逃亡は騎士に在らずよ!」

「すまん、助かった!」


シルビアの一喝で、ゼクは我に返り前線へ戻った

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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年4月1日 23時

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