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ゼクはその背中を無感情で見送り、砂が出切ったブーツを履き直しもう片方の砂出しに取り掛かった。
その2人のやり取りを青髪の盗賊が遠巻きで見ていたと知るのは、まだ先のことである。


───

「アナタ達、男3人女2人の5人度なんてロマンチックじゃない。どうして、旅なんかしてるの?」


太陽が砂漠の海に沈み、代わりに月が昇った頃には食事も終わりひと時の団欒を過ごしていた。
王子の寝息を聞きながらシルビアは疑問に思っていた事を、直球で5人に投げかけてくる。
それにセーニャが簡単に説明をしてくれた。


「もしかしたら、世界に災厄をもたらしたという邪悪の神と戦う日が近い将来訪れるかもしれません……」

「ダメよ、セーニャ!見ず知らずの旅芸人に、そんな事まで話しちゃ!」


ベロニカがセーニャにダメだしをするが、時すでに遅しとなった。


「へー!みんなの笑顔を奪おうとする邪悪の神ちゃんって悪いヤツが、これから復活するかもしれなくって……アナタ達はそれを倒すために旅してるっていうの!?なにそれ、面白そうじゃな〜い!」

「面白がる要素が何処にあんだよ、このタコ!」


隣に座っていたゼクが、面白がるシルビアに頭に一発見舞った。
不意の拳がクリーンヒットしたらしく、あだ!、と声を上げながら頭をさする。
何するのよ!、と言いながらシルビアは、平手でゼクに反撃する。
それを軽くいなして騎士は、鼻で笑って旅芸人を挑発した。


「そこ、じゃれるな。つか……こんな話を鵜呑みにするなんて、あんた変わってんな。」

「そういうシルビアはどうなのよ?なんで、旅をしているの?」


ベロニカの質問をはぐらかして、シルビアはゴロリ、とその場に横たわった。


「なんだよ、もったいぶりやがって。ったく、変なヤツだぜ。」


同調するのは魔法少女だけで、勇者と女僧侶は苦笑って困っていた。
そのまま一行は休み、夜の帳が濃くなり夜空に満天の星々が輝く頃には焚き火がくすぶり始めるのだった。


───

夜が明けゼクが重たい瞼を押しあげれば、寝起きの視界に旅芸人のドアップがあった。


「起きたのね、おはようのちゅーは必要かしら?」

「いらねーよ、アホ。」

「あら、残念。」


シルビアの体を退かし起き上がったゼクは、アホか、と言いながら大きな欠伸をする。
すると焚き火の反対側でも、誰かが欠伸をする音が聞こえてきた。

5→←再・王子の頼み事3



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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年4月1日 23時

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