救出 ページ14
「アタシのイレブンちゃんにおイタする子は、お仕置よっ!」
「お仕置よっ!!」
ホメロスは旅立ちの祠まで追ってきていたグレイグからの報告で、勇者は盗賊と騎士2人を連れているとしか知らなかったようで魔法少女と旅芸人の存在に困惑するがすぐに対処に当たった。
注目がベロニカ達へ向けられている今のうちに、とステージ裏からセーニャが唇の前に左手人差し指を立てて静かに、とジェスチャーしてから手招きをしてきた。
3人は足音を忍ばせて、そろりそろり、と裏からステージを降りていく。
だが、姿を消した3人に気づき当たりを見回しているホメロスにステージの影から出たところで見つかってしまった。
「そこにいたか。」
魔力の高まりを感じゼクがホメロスを振り返れば、今まさに手元から放たれようとしている闇呪文の塊が見えた。
「イレブン、あぶねー!」
その声に勇者はサッ、と振り向くが避けるには時間が足りなかった。
舌打ちが聞こえた隣を見やれば、盗賊が飛び出す瞬間だった。
次の瞬間、騎士の目の前で勇者をかばった盗賊が倒れ込んだ。
「カミュさまっ!」
「カミュっ!」
女僧侶の足も、勇者の足も止まってしまい勇者に至っては倒れ込んだ盗賊へと手を差し伸べてしまっている。
それを盗賊は手を払って拒絶した。
「オレのことはかまうんじゃない!イレブン、お前だけでも逃げるんだ!」
「けど…っ!」
「お前が終われば、世界が終わるっ!」
再度盗賊へ差し出そうとしていた勇者の手を、盗賊の後方から駆け抜けてきた騎士が掴んだ。
「頼んだぜ…ゼクっ!」
「バッカヤロ……っ!」
キッ、とゼクは歯を食いしばり、後ろ髪を引かれる思いを断ち切って勇者と女僧侶を引き連れてその場から離れた。
背後から聞こえてくるデルカダール兵達の声と、抵抗している盗賊の声にゼクは今だけでも耳を塞ぎたくて仕方なかった。
───
ドックの前まで逃げてきたイレブン、セーニャ、ゼクの3人は、カミュの犠牲があっての逃走成功に表情は暗く視線も落ちていた。
囮をしていたベロニカとシルビアも遅れて合流する頃には、日はとっくに沈んでいた。
「ここまで来れば、もう大丈夫よ。みんな、ケガがないみたいでよかったわ。」
「でも……カミュさまが捕まってしまいました。今頃、いったいどんな目に……」
「大丈夫だ、セーニャ。あいつがそう簡単にどーにかなるわけじゃねー。」
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年4月1日 23時