再・王子の頼み事3 ページ1
王子たちが出発してすぐ、一行の耳に聞き覚えのある声が届いた。
その声の主が何処にいる、と探していると次第に視線は城門の左側にそびえ立った石像の上へと向けられていく。
案の定、そこに旅芸人がおり一行と目が合ったと思ったら華麗に飛び降りゼクの上へとわざと落ちてくる。
｢おまっ、やめっ！｣
辛うじて避けたゼクの隣で、シュタッ、と綺麗に着地をする旅芸人にゼクは無性にイラついた。
｢サソリちゃんなんて、楽しいもんじゃないぜ。｣
｢つーか、サーカスのほうはいいのかよ。｣
｢ふふ〜ん。サーカスよりも、あのおぼっちゃんのほうが気になってね〜。｣
そう言ってシルビアは、決定権を持つ勇者に許可を求めた。
｢いいよ、よろしくね。｣
｢アナタなら、そう言ってくれると思ったわ。足でまといにはならないから、安心してね。｣
｢安心しろ、足でまといだと思ったら問答無用で斬ってやる。｣
｢あらやだ、怖〜い！｣
きゃあきゃあ騒ぐシルビアに、眉間の渓谷がさらに深くなりそうだ、とゼクは半眼で旅芸人を見やっていた。
そんな騎士をよそに旅芸人は、出発進行よ〜、などと乙女なポーズで握った拳を天へと向けてあげている。
勇者もそのまま歩き出した為、騎士は今日も殿を歩くことになった。
唯一救いだったのが、ゼクの前をカミュが歩いていることだった。
───
暫く歩くとキャンプ地が見え、王子一行はどうやらそこで
キャンプするようだった。
そこに勇者一行が合流すると、王子は旅芸人へ視線を向けた。
｢……なんだ？あなたも来てくれたのか。見ての通りだ。明日に備えて、ここでキャンプを張ることにしたからな。｣
｢ええ、ここらで休むのは賛成だわ。サソリちゃんは、手強いとウワサだものね。｣
｢イレブン、俺達も休もうぜ。｣
｢そうだね、今日はここでキャンプにしよう。｣
休めることが分かるとゼクは、適当な岩を見つけ腰を下ろしブーツを脱いだ。
そこにシルビアがやってきた。
｢ゼクちゃん。｣
｢んだよ。｣
ブーツを逆さまにして中に入った砂漠の砂に、ゼクは退室を促しながら旅芸人にチラリ、と視線を向けた。
｢呼び名の事だけど…｣
｢心配すんなよ、間違わねーさ。｣
｢貴方の事だもの、ついポロ、があるかもしれないじゃない。｣
｢騎士に二言はねぇ。…分かってんだろ。｣
それを聞いて安心したのかシルビアは、ありがと、と投げキスを残して勇者たちの方へ混ざりに行った。
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作者名：春月是駒 | 作成日時：2023年4月1日 23時
