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「やっとかかったわ!」


魔封じが成功するまで粘ったベロニカだが、だいぶ消耗したのか息が上がっている。


「お姉さま!」

「大丈夫よ、まだいけるわ!」

「ベロニカ!ルカニうてる余裕ある!?」

「まっかせてー!」


その後ろでゼクは、自力で何とか拘束を解いた。


「だらぁーっ!」

「こざかしいハエ共め!」


これでもくらえ、とアラクラトロは魔力を高めるが魔封じされている為無意味となった。


「くっ…重たいっ!」

「カミュ!お姫様の方手伝ってあげて!」

「…の前に、剣借りるぜーっ!」

「また勝手に!」


腰から抜かれた片手剣を気にしながらも、カミュは勇者に言われた通り闘士の救出をしている姫の方へ向かった。
ゼクはそのまま駆け抜け、アラクラトロの目の前で抜刀した。


「昇り…炎天っ!」


下から上への炎を纏った剣撃に、アラクラトロが怯む。

その隙にベロニカのルカニがかけられ、イレブンが渾身斬りを叩きつける。
それが決定打となり、アラクラトロは霧散した。


「これで、一件落着だな……」


囚われていた闘士達を救出し終えたカミュが、魔物の跡形もなくなった場所を見つめて呟いた。
拝借した抜き身の剣を、ゼクは納刀しハンフリーの前に立ち冷たい眼差しで見下ろす。


「仕方なかったんだ……オレのような三流闘士の稼ぎでは、子供たちを、養うことが出来なかった……ある日金が底をつき、アタマを悩ませているとアラクラトロの声が聞こえてきたんだ。」

「魔物共の常套手段だな。」

「仮面武闘会で賞金を稼ぐ為に、オレはチカラを手に入れることにした。ヤツの道具になる道を、選んだ……ろくでもない契約なのは、分かっていた。だけど、オレの育った場所……孤児院と子供たちを守る為には、こうするしか……」


ゼクは心の内を吐露するハンフリーの胸ぐらを掴み、無理やり立たせるとイレブンや老人の制止を振り切って頬を殴りつけた。


「だからなんだってんだよ。それは、お前が弱ぇからだろーが!強くなる努力もしねーヤツは、弱くて当然だ。」

「ゼク!」

「この者の言う通りじゃ。しかし、まだやり直せるはずじゃ。」


イレブンが止めに入り、胸ぐらを掴んでいた手を離させた。
老人がハンフリーに歩み寄り、仏の如くツテがあるから何とか手を打つから、と人生のやり直し案を提示した。
それを聞いてハンフリーは、泣きながら心から謝罪したのであった。

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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年4月1日 23時

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