行方不明事件 ページ34
｢ゼク、カミュ、シルビア、ちょっといい？｣
三者三様に過ごしていると、ノックの後にイレブンが扉越しに声を掛けてきた。
カミュが、どうした、と対応すると、イレブンは自分の部屋に集まって欲しい、と頼んできた。
頼まれた通り3人は、イレブンの部屋に向かった。
部屋に入ると既に双子は集まっていて、もう1人来客が居ることも視認した。
｢おじいちゃん、みんな集まったわ。｣
｢私たちみんなに話があるとか…｣
｢つーか、俺の弟子の姿が見えねーんだけど？｣
｢話とはその件じゃ。マルティナ姫が、行方不明になってしまってな。町中どこを探しても、見つからんのじゃ。｣
ゼクは目を見開いた。
やっと再会出来たと言うのに、とギリギリ、とグローブが鳴るくらいに手を握りこんでいた。
｢おそらく、何か事件に巻き込まれたんじゃろう。そこで、相談なんじゃが…お主ら、姫を探すのに協力してくれぬか？｣
｢イレブン、この話…俺からも頼む。｣
そう言ってゼクは、頭を下げた。
｢ゼク…おじいさん、分かりました。僕の仲間もこう言ってるので、協力させていただきます。｣
｢ふむ、恩に着るぞ。大会優勝者のお主とその仲間達が、いれば百人力じゃ。必ずや、姫を見つけられるじゃろう。｣
老人に協力することになったが、ゼクはいささか腑に落ちずにいた。
｢マルティナ姫が消息を絶ったのは、ハンフリーの孤児院の近くじゃ。まずは、そこに行ってみるとしよう。｣
勇者が仲間の顔を見やれば、各々こくりと頷いて老人を連れで部屋を出た。
いつもの様に最後尾を歩くゼクだったが、表情は怪訝そうだった。
｢どうしたのよ、ゼクちゃん。｣
｢なーんか、引っかかんだよな。｣
｢それで、そんな顔してるのね。｣
ズイッ、と覗き込んできたシルビアの顔を、右手でデスクローを決めながら引き離す。
｢近ぇーよ。｣
乙女に何するのよ〜、と痛がるシルビアを、ゼクは知るか、と鼻であしらった。
眼前に教会が現れて、徐々に緊張の糸が張るのが分かった。
中に入ると、沢山の孤児達がいた。
その子らに話を聞けば、地下というワードが飛び出してきた。
｢行ってみよう。｣
教会の地下へ降りていくと、壁にぽっかりと穴が開いていた。
一行と老人は、足元に気をつけながら闇の中を下へ下へと降りていった。
最下層らしき場所で開けた場所に出ようとした時、老人に制された。
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作者名：春月是駒 | 作成日時：2023年4月1日 23時
