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目が覚めて視界に広がったのは、豊満な乳房…とはかけ離れた真っ平らな胸板だった。
「ん…」
「起きた…?」
「善逸…?」
眉尻を下げて、心配そうに見つめてくるたんぽぽ頭。
俺が名前を呼べば、大きな目に涙が滲み出した。
「ぜ…善逸…?」
「ごめっ…泣くっ、つもりじゃ……っ。」
一生懸命、取り繕おうとすればする程に善逸の黄金色の目から涙は溢れて零れ落ちる。
何とかして涙を拭おうとしていて、必然的に目を羽織の袖に擦りつけている。
「ストップ…目が腫れる。」
今にもぐしっ、と涙を拭こうとした腕を俺は寝起きの怠さが残る腕を伸ばして掴んだ。
「紫音……っ。」
「おいで…」
涙と鼻水でぐしゃぐしゃな善逸を、掴んだままの腕を引いて俺の胸へと導く。
抵抗することも無く善逸は俺の胸へ、ポスッ、と倒れ込んできた。
腕から手を離し、そのまま黄色い頭を撫でればそれが拍車を掛けたのか声を上げて泣き始めた。
良かった、と。
心音は聞こえていても目を覚まさないんじゃないか、と。
吐露された言葉は、俺の体を包んでいる白い掛け布団に吸い込まれてから俺の耳へと届いた。
───
あれから数日が経った。
あの後、泣き腫らした目の善逸がしのぶを呼んできて自分の状態を聞かされた。
体格が功を奏したのか、折れてると思っていた両足は二週間もすれば完治するらしかった。
善逸に至っては、俺よりも軽いようで今日からアレが始まるらしい。
「嫌なんだけどっ!また、アレ受けなきゃならないわけっ!?治るより、アレで死んじゃうって!!」
「
「いや、そうなんだけどね……でも、アレ終わってお墨付き貰ったら任務復帰だよ??今度こそ、死んじゃうよーーーっ!」
隣の寝台の上で、ドタバタ、と子供の様に暴れている善逸。
俺の怪我が完治してお墨付き貰うまでは、無理やり任務について行くことも出来ない。
「
「謝るなよな…時間だから、行ってくるよ。」
全身から行きたくないオーラを放ちながら、善逸が寝台からのっそりと降りた。
「善逸。」
「…何?」
振り向いた善逸を手を引いて、俺の方に引き寄せてそのまま前髪の間から覗く額へ唇を押し付ける。
Chu...
離れればたんぽぽ頭が、真っ赤な顔してた。
「
「…ばぁか。」
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春月是駒(プロフ) - すずめさん» ありがとうございます!書ききれるように、頑張ります! (12月9日 14時) (レス) id: 6d8cf13a77 (このIDを非表示/違反報告)
すずめ(プロフ) - めっちゃ好きです…応援してます (12月9日 13時) (レス) @page45 id: 200c70ae26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年8月19日 18時