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怒れる
「ギャッギャッギャアアアアアアアアンヌ!!!」
「おいっ、むらさき!熊公を片付けたら、そっちも仕留めてやるから、一匹ずつ仕留めていけ!紋逸もやれ!」
絶叫する善逸を他所に、伊之助は俺たちにそう言ってきた。
「
「バカなの!?雀蜂だよ?死ぬよ?死んじゃうよ!?」
山育ちの伊之助と一緒にしないでほしい。
俺と善逸の反応は、至って普通だと思うよ。
「雄に毒針はねぇ。先に雌を仕留めろ。まぁ、ほとんど雄はいないけどな。」
「
「どっちが雌とか、わかるか!わかってたまるかァ!!」
全身全霊で叫ぶや否や、吐き捨てた俺の上から飛び降りた。
俺の手と伊之助の腕を引っつかむと脱兎のごとくその場から離れた。
見事な敵前逃亡だ。
───
「はーはーはーはー……あー、もう……あーもう、死ぬかと思った。ホント死ぬかと思った。生きてて良かったよ。」
夜の山を適当に駆け巡り、熊と蜂の猛追から逃れた善逸。
俺たちから手を離して、地面に蹲りながら肩で息をしている。
「どうして、引き摺りやがった!」
善逸の常套手段である敵前逃亡は、伊之助を怒らせていた。
今にも斬りかからんばかりで、俺はそんな伊之助を抑え込んでいた。
「俺なら、熊も蜂も倒せた!余計な事すんじゃねぇ!離せっ、むらさきぃっ!」
「離さないよ?離せば、善逸の事斬るでしょ。」
「あーそうですか。確かにお前なら、仕留められただろうよ。山の王だしさ。だけど、あれは雀蜂だったし、木を倒したのは俺だし、俺のせいでお前が怪我したり死んだりしたら、嫌だろ?だから、連れて逃げたの。はいはい、俺が悪かったよ。すみませんね、考え無しでさ。」
敵前逃亡の理由を説明して、最後は投げやりに言った善逸。
だが、伊之助の抗議の声はピタリ、と止まった。
抑えていた体からも、そこまでに力が入っていない。
だけど、今度はホワホワさせんな、という理不尽な理由で怒り出した。
「総治郎といい、てめぇといい、隙あらば俺をホワホワさせやがるからな!今度、それやったらぶっ殺すぞ!」
「はぁ?」
そんな同期同士のやり取りを見て、俺は伊之助を解放した。
音が、教えてくれた。
伊之助が本気で怒ってるわけじゃないって。
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春月是駒(プロフ) - すずめさん» ありがとうございます!書ききれるように、頑張ります! (12月9日 14時) (レス) id: 6d8cf13a77 (このIDを非表示/違反報告)
すずめ(プロフ) - めっちゃ好きです…応援してます (12月9日 13時) (レス) @page45 id: 200c70ae26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年8月19日 18時