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101´ ページ13

「帰りたい…」


任務と任務を蜜蜂の如く渡り歩き、俺は一人藤の花の家紋の家に寄らせてもらっていた。
別段、怪我をしたわけじゃない。
宿代、勿体ないんだよね。
お師匠に、お金返さなきゃだから。

夕食をもらい、湯浴みもさせてもらえた。
用意された浴衣を着て、敷かれた布団の上へ座った。


「はぁぁ…本当に帰りたい。」


励ます人も、罵倒する人もいない。
パタン、と布団に横になる。
ついこの間まで、隣で俺を見つめてきて目が合えば笑う紫音が今はいない。


「……怪我、治ったかな。」


呟きに返ってくる声なんてなくて。
殊更、胸がきゅっ、ってなる。
それが無駄に痛くて、俺の眉間に皺が寄る。


「チュン!」


窓の戸がガタガタなるのと同時に、外から聞きなれた鳴き声を耳があざとく捉えた。
もう、なんだよ…、と少し起きるのが億劫な体に鞭打って窓を開ければそこにはチュン太郎がいた。


「もー、何?俺、疲れてるんだけど?」

チュン!チュチュチュン!(手紙!持ってきた!)

「いや、分かんないから…紫音の異国語並に分かんないって…」


何か伝えようとしてるチュン太郎に、俺は異国語をペラペラ喋る紫音が重なって見えた。
……チュン太郎と違って、紫音はカッコイイけどさ。


「チュン!」

「何?足?足がどう…っ!」


足がどうした、と続くはずの言葉は、あるものを見つけて途切れた。
それは、チュン太郎の足に括り付けられた紙だった。
慌ててそれを外して、チュン太郎を放っておいてその紙を開いた。


「親愛なる善逸へ……泣いてない?怪我、してない?」


手紙の頭から文字を目で追う。
文字までカッコイイって、どういうことなんだろうか。
紫音だから許せるけど。

俺への心配。
傍にいられない事への謝罪。
怪我の経過。


「追伸…俺も、逢いたいよ。」


本文よりも大きな文字で書かれた紫音の感情が、そこにはあった。
胸がきゅっ、てまたなった。
手紙ごと抱きしめて、目を強く閉じた。
心臓をそのまま掴む勢いで胸元の浴衣を掴めば、手紙がくしゃっ、と音を立てる。
溢れ出る"好き"を、抑え込む様に。


「紫音…」


思い出すのは、額への接吻だけで。
唇へのものや、首筋やお腹、体のあちこちにしてもらった接吻は思い出せなくなっていた。


「……次の任務で、一緒になることないかな。」


そんなあわよくばを願いつつ、俺はやっと窓を閉めることが出来た。

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春月是駒(プロフ) - すずめさん» ありがとうございます!書ききれるように、頑張ります! (12月9日 14時) (レス) id: 6d8cf13a77 (このIDを非表示/違反報告)
すずめ(プロフ) - めっちゃ好きです…応援してます (12月9日 13時) (レス) @page45 id: 200c70ae26 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年8月19日 18時

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