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捕まっていた命のある遊女たち全員を、解放する事が出来た。
寝たまま一閃六連繰り出していた善逸も、今はただ眠っているだけだ。
……立ったまま寝てるのは、異常だとは思うけど。
「……紫音?」
「怪我は、ない?」
「心配ありがとう紫音、この通り大丈夫さ。」
「そう…」
人目も憚らず、時と場所も弁えず、俺は善逸を腕の中へ閉じ込めた。
善逸の感触に、心音、温もりを感じて存在を実感出来たと共に己の不甲斐なさまでもを痛感させられる。
そんな俺たちを他所に、隣で師範の忍獣であるムキムキねずみが自慢の筋肉を見せつけている。
と言っても、誰かがそれを見ているわけではないけれどね。
「うぉいっ!蚯蚓帯共が、穴から散って逃げたぞっ!」
「うるっせぇぇぇえ!!捕まってたやつら皆助けたんだから、いいだろうがぁぁぁぁっ!」
「……
「日本語話せっ!つか、引っ付いてんじゃねぇよ!!」
見事なとばっちりを頭に受けた俺は、善逸に頭をさすられている。
あ……これ、良い。
「まずは俺を崇め讃えろ!話はそれからだぁっ!」
師範の剣幕に、さすがの猪突猛進の伊之助でも言葉にならない声を上げて気圧されている。
クワつく師範に、後ろからまきをと須磨が慌てて被害が拡大する前に鬼を追うよう言ってきた。
「んじゃ、ここは任せたぜ?」
「はいっ!」
「行くぞ、紫音!」
つかつか、と俺の方へ寄ってきたかと思えば、師範はむんず、と善逸を掴みあげた。
「ちょっ!師範!?善逸を無下に扱わないでくれない!?」
「どわっ!何しやがるっ!」
俺の制止も聞かず、善逸の次には伊之助を掴みあげあろう事か二人を天井の穴から地上へと放り投げた。
「はぁ!?善逸っ!」
慌てて俺もそこへ向かって飛び、宙で善逸を両腕で抱え込む。
少し遅れて、師範が隣で伊之助を片腕で抱き止めるのが視界の端の方に見えた。
「野郎共!追うぞっ!着いて来いっ!」
そう言って師範は、伊之助を近くの屋根の上に
「さっさとしろぉ!どけどけぇっ!宇髄様のお通りだぁぁっ!」
「忍に着いていけないから…」
「くっそ!速ぇぇぇええっ!」
そりゃそうだ。
忍上がりの師範より、足の速い鬼殺隊員なんているはずも無い。
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年6月11日 22時