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「なぁ炭治郎〜、紫音〜。やっぱり俺じゃあ無理だよぉ、俺がいたって何の役にも立てないしさぁ?」

「そんなことないよ、善逸。君がいると、俺は頑張れる。」


俺がそう言えば、泣き顔で俺を見てくる善逸。
炭治郎は、何も答えず黙々と足を動かしていた。

開けた場所に出たと思うと、目の前には一軒の家が建っていた。


「血の匂いがする。でも、この匂いは……」


見上げながら炭治郎が言う。


「え?何か匂い、する?」

「ちょっと今まで……嗅いだことがない。」

「それより、何か音がしない?」


右耳に手を当て良く聞いていると、善逸も同じように手を耳に当て音を聞いているようだった。


「うん、何か音がする。あと、やっぱ俺たち共同で仕事するのかな?」

「うん、俺のところにそう届いてるから間違いないよ。」


やっぱりそうなんだ、と引っ込んでいた善逸の涙がまた目元に滲んだ。


ごめん(ソーリー)、泣かせるつもりはないんだ。」


謝りながら善逸の顔を覗き込み、目元の涙を人差し指の背で拭う。


「音?」


そう聞き返してきた炭治郎だが、その目には俺たちではない別なものを映していた。
釣られて俺もそっちへ視線を向けると、そこには男の子と女の子がいた。
何かから守るように、男の子は女の子を抱きしめている。


「子供だ。」

「どうしたんだろ。」

「君たち、こんな所で何してるの?」


怯えきった子供たちに、俺は歩み寄ろうと声を掛けた。
なのに、子供たちから聞こえるのは恐怖の音だけで、この時ばかりは自分の体の大きさに舌打ちをしたくなった。
見かねた炭治郎が近づき、手乗り雀だ!とか言って一芸披露すると少し、警戒を解いてくれた。
それと同時に緊張の糸が切れたようで、その場にへたりこんでしまった。


「教えて、何かあった?」


警戒を緩めてくれたのなら、と俺も近づき目線を合わせるように片膝をついて身をかがめる。
俺の質問の仕方が悪かったのか、子供は無言だった。


「ここは、二人の家?」

「違う…違うっ!こ……ここはっ、ば……化け物の……家だっ!」


ビンゴ。
今日の仕事場は、どうやらここらしい。

二人は兄妹で、更に上に兄がいるという。
その兄が鬼に連れていかれた。
人間という鬼にとっては格好の餌だというのに、二人には目もくれず兄だけを連れていったという。
すぐに、俺は"稀血"だと判断した。


「あの家に、入った……でいい?」

「うん…っ!」

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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年6月1日 18時

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