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SIDE:A
「……ま、この様子なら大丈夫そうやね、絢香さん。な、A。」
そう言って隣にいつの間にか立っていたセンラ。
「ど、うして」
「なにがやねん、どうしてって」
まるで何も無かったかのようにきょとんとしているセンラ。
「絢香さんとこ、行かなくていいの?」
「?行く義理ないやん」
「でも、カッターで怪我してたし」
「?うん、そやね」
そやね、じゃないし、女の子が泣いてたら行きなよ
……そばに居てくれるのは嬉しいけど。
「……私がしたとか、思わないの?」
「Aがやったん?」
「いや、やってないけど」
「な、やってないやん」
な、って、まるで知ってたみたいに言うから、ずるい。
ちょっとは疑ってもいいのに。
「なんで、疑わないの?」
「え、彼女疑うとかおかしいやろ、そもそもA、そんな事するわけないし」
するかもしれないじゃん、私がなにかしたりさ。
こういうとこ、ずるい。
「……そ」
「……え、照れてるん?かわえぇなぁ」
「照れてない」
ニヤニヤすんなこの野郎
「……ま、保健室、行こか、一応。
様子見に行こ、A、心配やろ?」
「……別に。センラが行きたいみたいだから行くよ」
「ふふ、行こか」
*
保健室と書いてあるプレートが見えた。
……よく考えたら、行っても何か出来るわけじゃないのに行く意味あるのかな
「……ねえセンラ、」
”やっぱやめる?”と言おうとした時、
「っ絢香、ちゃん!!」
保健室から、坂田の声が廊下に響き渡る。
きっと、保健室からだ。
どうしたんだろう、と思い少し駆け足で保健室へ向かう。
「……坂田、どうしたんやろ」
「…とりあえず、入ろう」
保健室の前に着くと、何やら言い争っているような声が聞こえた。
コンコン、とノックして、「入るよー?」と声をかける。
「え、っA!今はっ!」
そこに見えたのは、ベッドで坂田が絢香さんを押し倒している光景。
「さ、坂田くん、腕、痛い」
「っ、お前!」
そこに見えた坂田は、何だかいつもと違って見えて、少し怖かった。
「……坂田、とりあえず体起こしたらどう?」
「ち、違くて、A、ほんまに」
「別にいいんじゃない、恋人だし。
でもここ保健室だし、絢香さん、腕怪我してるから今はやめた方がいいと思うけど」
「……っ、」
坂田がすっとベッドから降りた。
いかにも悔しい、というような表情。
そんなに最後までしたかったのかな、家でやればいいのに。
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柚子(プロフ) - いい感じにすれ違って行ってますね(?)まぁ楽しみということです!頑張って下さい (2020年4月11日 22時) (レス) id: f5a2d726a8 (このIDを非表示/違反報告)
絵が上手くなりたい(プロフ) - うわぁ…気持ちは分かるけど絢香ちゃん腹黒だぁ…坂田さん、複雑な気持ちだろうな…。更新待ってますね (2020年4月11日 0時) (レス) id: e48c7240eb (このIDを非表示/違反報告)
きほん(プロフ) - はじめまして、とてもキュンキュンしながら読ませていただいています!ドキドキハラハラキュンキュンで、個人的にはどちらのオチも見てみたいですが、どうなるのかとても楽しみです! (2020年4月9日 0時) (レス) id: d19256ebb3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ - 年下組が夢主ちゃんのことでバチバチ(?)なっているのがキュンとしました。あと、作者様の書く文がとても好みです!その文才を私にも恵んで下さい…長文失礼しました。 (2020年4月3日 12時) (レス) id: 5d83f022ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゃけ | 作成日時:2020年3月30日 0時