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SIDE:A
最近、絢香さんを見かけなくなった。
風邪なのかな。
そう考えていた時、丁度、声をかけられた。
「Aさんー?絢香ちゃんって子が呼んでるよ!」
冷たさが少し混じったような、そんな声。
まだ、私のことはお嫌いみたいで。
ま、知らないけど。
「……ああ、今行く」
どうしたんだろ
*
「……久しぶり、絢香さんどうしたの?」
「あ、あのね、私、Aちゃんに話があって、」
「うん」
「ここじゃちょっとやだから、あっち行こう?」
指さされたのは空き教室。
絢香さんに着いて行く。
空気がひんやりしていた。
「……あのね、Aちゃん、」
「なに?」
「Aちゃんって、私のこと、嫌い?」
「別に」
「じゃあ、なんでこの前睨んできたの?」
「睨んだことないよ、私目つき悪いからそう見えちゃったのかも」
「……そう、か、ごめんね、ありがとう」
「ううん、話ってそれだけ?それならもう行くけど」
「ううん、まだあって、」
「?うん、」
絢香さんからカチカチカチ、と音がする。
「ごめんね、Aちゃん」
す、とカッターを取り出し、自分の腕に突き刺した。
あぁ、この状況、漫画で見たな。
”カッターキャー”ってやつか。
「わたしが、わたしが坂田くんに愛されるためには、これしかないのっ、ごめんね、Aちゃん……!」
絢香さんが、すぅ、と息を吸った。
手筈通りなら……
「……キャーー!」
……ビンゴ。
カシャンとカッターがこちらに投げられた。
声を聞いて、人が集まってくる。
ぽたり、と絢香さんの腕から血が垂れる。
「え、Aちゃんが?」
「いくら嫌いだからってそんなことする?」
「え、ウケる。状況証拠揃いすぎじゃね?」
絢香さんのことはみんな好きで、
私のことはみんな嫌いで、
それで、絢香さんが怪我してて、
私の方にはカッターが落ちてて。
味方になる方は、まあ、決まってるようなものだ。
……そこに、坂田とセンラが来た。
「……あれ、なんの騒ぎ……あ、Aやん、どし、た、……。……え?」
「……!絢香ちゃん、大丈夫か?!血……!」
絢香さんのもとに2人が駆け寄る。
「っ、大、丈夫」
「大丈夫なわけないやん、保健室行こうや、な?」
「……ありがとう、坂田くん、」
弱々しく絢香ちゃんが立ち上がる。
「……ま、この様子なら大丈夫そうやね、絢香さん。な、A。」
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柚子(プロフ) - いい感じにすれ違って行ってますね(?)まぁ楽しみということです!頑張って下さい (2020年4月11日 22時) (レス) id: f5a2d726a8 (このIDを非表示/違反報告)
絵が上手くなりたい(プロフ) - うわぁ…気持ちは分かるけど絢香ちゃん腹黒だぁ…坂田さん、複雑な気持ちだろうな…。更新待ってますね (2020年4月11日 0時) (レス) id: e48c7240eb (このIDを非表示/違反報告)
きほん(プロフ) - はじめまして、とてもキュンキュンしながら読ませていただいています!ドキドキハラハラキュンキュンで、個人的にはどちらのオチも見てみたいですが、どうなるのかとても楽しみです! (2020年4月9日 0時) (レス) id: d19256ebb3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ - 年下組が夢主ちゃんのことでバチバチ(?)なっているのがキュンとしました。あと、作者様の書く文がとても好みです!その文才を私にも恵んで下さい…長文失礼しました。 (2020年4月3日 12時) (レス) id: 5d83f022ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゃけ | 作成日時:2020年3月30日 0時