【歌い手】お願いだから嫌いにさせて

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SIDE:A


「なぁ、お試しでええから、センラと付き合ってみぃひん？1週間でええから。それでフラれたら綺麗さっぱり諦めるわ、どう？」

……どうして、わたしなんだろう

「で、でも、お試しでなんて、そんな気持ちでセンラくんと付き合うのは、失礼でしょ、」

「センラがええって言ってるんやから、ええの！それとも、嫌？」

そうやって困ったように笑うセンラくんに、私は首を振ることなんて出来なくて、

「……い、1週間だけ、なら、」

そう答えた瞬間、センラくんの顔がぱっと明るくなる。

「！ほんまに！？ありがとう、大切にするわ、ほんまに！ふふ、今むっちゃ幸せや」

こんなにいい加減な気持ちで、すっと決めてしまってよかったのだろうか。

それでも、センラくんの笑顔はとても幸せそうで、今更変えるなんて出来なかった。


「なあなあ、写真！写真撮ろうや、記念に！」

「え、あ、うん」

「……はは、ほんまにごめんな、幸せすぎてめちゃくちゃテンション上がってもうてる、へへ」

いつもは面倒みがよかったり面白かったり、時々かっこよかったり、という印象だったが、

頬をほんのり紅く染めて、表情を緩めている様子を見ると、なんだか可愛らしく見えて、つい笑ってしまった。

「……何笑っとるん、もう」

「可愛いなあって」

「かっこいいって言っとけや」

「たまにね」

「たまにかぁ」


「……そや、Aちゃん、俺のことセンラって呼んでええよ、呼び捨てで。その方が俺、嬉しいし」

「え、と、センラ……？慣れないね、なんか」

「へへ」

「……何笑ってんの」

耳がいつもより熱いような気がした。

＊


「お、センラ、A！どこ行っとったん？」

「ちょっと話があってなあ、な？」

「そうだね」

「ふぅん、そうなんや」


＊


「なぁ！センラ、A！帰ろーや！」

「ああ、帰ろか！」

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