1話 ページ2
「ついにまたこの時が来ちまったな…」
「人望ある若人なのに…可哀想に」
「年々入隊人数が減ってってるんだろう?」
最終選別のときは毎年盛り上がっていたはずなのに噂の『人間』が現れるようになってからその盛り上がりを見せなくなった。
むしろどこか葬式のような雰囲気を漂わせてさえいる。
一方、藤の山には今年も入隊希望者が百人あまり集まっていた。
影からその様子を伺っていた少女はまたがたがた震えだした。
「殺される前に…私が殺さなきゃ……生きる、ために…!」
また、選別が始まった。
少女は刀を構えながら山を歩く。
まだ昼なので鬼は出ていないが、貪欲な者は一緒に選別を受けるべき同胞を討っていった。
「……見つけた」
少女は一人で山を登っていく一人の少年を見つけた。
「…彩の呼吸……壱ノ型…『無色円舞』…!」
少女は景色に擬態して瞬速で少年に切りかかった。
「殺すなら、死ね」
「うわぁぁぁっ!!!」
逃げる暇を与えずに急所を突き刺す。少年は暫く痙攣して事切れた。
「今の……何だ?」
近くにいた剣士は叫び声の方へ向かって行った。
「やめろ!そっちに行くんじゃない…出たんだよ、また…あいつが…!」
また違う剣士が小さく叫ぶ。
「何が出たっていうんだ?今は昼だぞ?」
「お前知らないのか?『藤の香の人間』の事…出会ったが最後、殺されるんだそうだ…だから昼間聞こえた悲鳴には反応するな」
「そうか……でもそれはまずいんじゃないか?襲われた人も心配だ、俺行ってくるよ!」
剣士は助言を聞かず、一人で走っていった。
「あっ、おい馬鹿!!」
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