【歌い手】近くて遠いキミ【となりの坂田。】

キミと出会った ページ3

看護師さんは、お医者さんと違って白衣は着ていない。



彼は普通にワイシャツでズボンだったからそう判断出来た。



私はよくこの病院に来るけど、見たことない人だった。





私が黙っていると、彼はズカズカと個室に入ってきてカーテンをシャッと閉めた。







「見られたくないんやったらこうすればええ。俺しかおらんよ」




そういうと私に背を向けて彼は近くにいてくれた。





彼の心遣いは嬉しかったが、驚きで涙は止まってしまった。






『あ、あの……もう平気です…』



いつまでもここに引き止めておくのは、彼に迷惑をかけてしまう。

私は背中越しに彼にそう言った。








彼はこちらを振り向き、笑った。


ポンポン

「無理しちゃアカンで、泣きたい時は僕が来るから1人で泣かんといてな。」





そう言うと彼はカーテンを開けて個室から出ていった。
















『……頭ぽんぽんされた……あんなことする人なんているんだ…。』

彼が去っていった部屋で私は独り言を零した。





…そういえば、お礼も言えなかった。





彼の名前も分からないけど、泣いている時一緒にいてくれた人なんて今までにいなかったから


なんだかドキドキして、嬉しかった。













『また、会えるのかな……』



ここにいる看護師さんにあの人のことを聞いてみようと思った。




男性の看護師さんは珍しいから、きっと聞けば分かるはず。





名前を教えて貰って、お礼だけでもしたい。そう思えた。

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