misbehave Ⅱ (ページ32)

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〜岸 side〜

｢準備できた？｣

｢うん。｣

｢行こっか。｣

玄関で待つ俺の横をスッと通り抜けて車に乗り込んだ。

車内は当然会話なんて無く、ただ垂れ流している爽やかな朝の陽気な声や音楽が流れているだけ。

車で30分。ドライブは割と好きだし、普段は長いって感じない地元までの道のりでさえ長く感じてしまう。

この空気をどうも早く抜け出したかった俺は少しだけいつもよりアクセルを強めに踏み込んだ。

｢…。｣

｢…。｣

｢…最近、優太なんか楽しそうだよね。｣

｢えっ、？｣

赤信号で止まったタイミングで、急に聞かれた質問にドキッとして青になった信号に気づかず、後ろの車のクラクションに思わずビクッと肩を震わせ、またアクセルを踏んだ。

｢…、ほんと分かりやすい。仕事で上手く行ってるのね。…羨ましいわ。｣

あぁ、仕事か。Aと逢う時のごまかしに使う嘘の一つ。すぐにバレるだろうけど、俺の頭じゃこの分かりやすく単純なが限界だった。

｢まぁ。でかいプロジェクトも無事に終わったしね、美玲は？相変わらず忙しいの？｣

｢上手く行ってないからね、本当はこんなことしてる場合じゃないし。すぐ切り上げるつもりだから長居しないでね。長くなりそうなら私先に電車で帰るから。｣

分かった。と返事をして、美玲がどんな表情をしてるのかチラッと見たけれどいつも通り…。

冷たく冷めきったものだった。