伯弐拾頁─双ツノ黒ト 8─ ページ16
「さて、やるか」
その言葉と共に太宰さんが短刀で夢野君を拘束している枝を切る────事は無かった。
短刀は枝ではなく、さも当たり前という風に躊躇無く夢野君の首元に添えられ......た。
中也さんの表情は私より少し前に立っているので窺えないが、少しも動かず何も云わない。
「...止めないの?」
「首領には生きて連れ帰れと命令されてる。だが、この距離じゃ手前のほうが早え。それにその餓鬼見てると呪いで死んだ部下達の死体袋が目の前をちらつきやがる」
確かにこの距離では止められない。
瞬時に地を蹴っていたとしても夢野君は無傷ではいられないだろう。
私情を挟んでいるとはいえ、一般的には正しい判断だ。
「やれよ────と云いてえ処だが、それだと俺は五体満足で拠点には帰れなくなるだろうし、手前は一生三途の川に片足しか突っ込めなくなる。それが嫌なら此奴を説得するか、素直にその短刀を退けろ」
彼はいつにも増して機嫌が悪い声でそう云い放ち、何故か親指で此方を指す。
太宰さんは数秒間そのまま動かず、此方を見て目を細める。
そして何かを諦めたかのように一つ大きな溜息を吐き、静かに短刀を夢野君から離した。
「流石にこれは冗談では済まされなかったね。Aが彼の為にそこまで譴責するとは思わなかった」
『それは私に対しての挑発ということですか』
「真逆。君を敵に回すなんて莫迦な考えはしないよ」
その表情は微笑みを見せているが、鋭く光る双眼は私の僅かな反応を見逃すまいと離さず見据えていた。
「判ってくれたのならその物騒な物を仕舞ってくれないかな?多分自覚は無いんだろうけど」
『......?』
太宰さんに手元を指差されて私は視線を下に移す。
手には何の違和感も無く拳銃が収まっており、さっと一気に血の気が引いた。
『...あっ、すみません。気付いてなかったです』
小さく謝罪し、またかと頭を抱えてそれを懐に仕舞う。
「Aって昔から無意識に行動してる時があるよね。注意したほうが善いよ」
『直そうとして直せるものではないですからね...まぁ、善処します』
“だからと云って夢野君に短刀を向けていい理由にはなりませんけどね”と私が吐き捨てるように云うと、彼は“後で埋め合わせるから”と妙な大きさの枝に刃を入れた。
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煉華☆(プロフ) - 狼楼さん» 了解です、合っていて良かったです(*^^*)承認しておきますね。最新パートまで読んでいただきありがとうございます!過去編共々頑張っていきます! (2019年6月15日 17時) (レス) id: fa2422e9a4 (このIDを非表示/違反報告)
狼楼(プロフ) - 煉華☆さん» 最新パートまで読ませていただきました!これからの有島ちゃんが楽しみです! (2019年6月15日 15時) (レス) id: 8b97f6f5d3 (このIDを非表示/違反報告)
狼楼(プロフ) - 煉華☆さん» 狼楼に直しときました…汗 (2019年6月15日 15時) (レス) id: 8b97f6f5d3 (このIDを非表示/違反報告)
狼楼(プロフ) - 煉華☆さん» あ!あってます!直すの忘れてた…汗 (2019年6月15日 15時) (レス) id: 8b97f6f5d3 (このIDを非表示/違反報告)
煉華☆(プロフ) - 狼楼さん» すみません、今「炎化狼」という名前の方の申請をもらっていたのですが、狼楼さんでしょうか?名前に狼とついていたので質問させていただきました。 (2019年6月15日 14時) (レス) id: fa2422e9a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:煉華 | 作成日時:2018年3月6日 7時