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あの後、
いのちゃんと大ちゃんに、あれよあれよと促され、
俺は今、薮さんと二人で帰り道を歩いてる。
(ちょっと待て、展開が早すぎないか)
薮さんは歩きの俺に合わせて自転車から降りてくれ、
気まづい空気の中、ただゆっくりと歩き続けた。
だけど とうとう、この空気に耐えられなくなった薮さんが口を開いた。
「…光さん、そこの高校だったんだね」
「まあ、はい。家から近いんで」
「この辺に住んでるんだ？」
「すぐ近所ですよ。薮さんは？」
「俺はね、電車通学。駅まで自転車なんだ」
「へえ、そうなんだ。でも凄いですね。進学校に通ってるなんて」
「親に無理矢理、通わされてんだ。それだけですぅ」
話してみると、薮さんは物腰も柔らかくて、
悪い人じゃないことはわかった。
それだけじゃなく、
俺の話はなんでも聞いてくれるので、
もっと話してたいな、くらいには思えるようになった。
「じゃあ、俺の家この辺りなんで」
「うん。気をつけてね」
「はい。ありがとうございます。」
家もうすぐ近くなのに。
心配してくれるなんて、優しすぎだろ。
ニコニコの薮さんが急に俯いて、照れくさそうに言った。
「あ、明日も…一緒に、帰ってくれないかな」
「…いいですよ」
「……えぇっ？！いいの？！」
パッと目を輝かせた薮さんが可愛すぎたとか、
絶対に言えないから。
·
その後は、
放課後のたびニヤニヤしてくるいのちゃんと大ちゃんを無視して、
毎日のように薮さんと二人で帰った。
薮さんとの会話はとても楽しくて、
薮さんと話せる時間が何よりの幸せだった。
ある日、
薮さんが俺にネックレスを差し出した。
「俺と、付き合ってくれませんか」
薮さんが選んでくれたネックレスはとても綺麗で、
男だけど、すっごく嬉しかった。
「喜んで」
返事に迷いは無かった。
断る理由も無かった。
それくらい、薮さんのことを好きになっていたから。
·
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作者名：餅もち子 | 作成日時：2017年5月23日 23時
