恋と雪 (ページ6)

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五話ページ6

｢あ、ついちゃった。｣

｢だな…じゃあ、また。｣

｢うん。ばいばい｣

いつも私たちが別れる十字路。私の家はすぐ近くで、有野くんの家は少し距離がある。名残惜しいけど、私は灯りの着いていない自分の家へと入る。

｢ただいま～…｣

返事はなく、私の声が玄関に響く。お母さんは大抵夕方から朝までの勤務。お父さんは出張でいない。私一人。

灯りをつけて、二階の自分の部屋に上がった。思い鞄を置き、セーターとネクタイ、マフラーと手袋をクローゼットにかけてお風呂に行く。

脱衣所は寒い。とても寒い。髪のゴムを外して、急いで入った。

お風呂と晩御飯はお母さんが用意しておいてくれる。自分でできないこともないんだけどまだ子供なんだから、それくらいさせて、とやって貰っている。

頭と体を洗って、湯船に入った。

(暖かい…)

そのまま寝てしまいそうになるのを何とか堪えて、また寒い脱衣所に出た。

着替えて髪を乾かして、キッチンに向かう。

一人分の鍋にシチューが入っていた。その隣には、袋に入った食パン。そして『暖めて！』という走り書き。シチューを少し掬ってみると、数時間前まで暖かかったはずなのに、それを全く感じさせないような冷たさだった。当たり前だけれど。

火を付けて、シチューを温める。パンもレンジで加熱した。

｢…いただきます｣

一人分のご飯を一人で食べて、後は一人で寝るだけ。こんな生活は小学校からで、もう慣れた。最初は寂しくて怖くて一人で泣いていたけど、高校生になったし何も思わない。

それに今＿私には、あの時間がある。だから寂しくなんてない。

食べ終えて、食器を片づける。そして静かに自分の部屋に上がった。