恋と雪 (ページ4)

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三話ページ4

電車の中は、相も変わらず空いている。杖を持ったお爺さん、私達とは別の制服を着た女子高生、眠そうな赤ちゃんを抱いたお母さん。その中で、私達は適当に座る。

最近は、夕日の沈むのが極端に早い。だから、西の空のほんの隅に暖かいオレンジが見える程度になって、後は黒とも青とも言いがたい、その間のような色が世界を染める。

その世界と対になるような電車内の白い光が、有野くんの白い肌を余計に白く見せた。

ふと、スカートのポケットに飴玉があることを思い出した。今日、なんとなく飴が食べたくて適当に二つ入れておいたのだ。

｢いる？｣

｢ん、いい？｣

｢うん｣

｢ありがと｣

｢気まぐれだから｣

有野くんの真似をして、言ってみる。少し驚いたようだけど、そっか、と言って笑った。

レモンと桃。有野くんはどっちを選ぶのかな。

｢初瀬は、桃っぽいよな。｣

そう言って、桃の方を手に取った。

｢どういうこと？｣

私は、桃が好きっぽい、って言うことだろうか。だとしたら、少し意地悪だ。どっちも好きだからいいんだけれど。

｢んー…なんか、雰囲気？が桃っぽい？｣

｢ふふ、意味わかんない｣

意地悪した訳じゃないみたい。まあ、いいや。

レモンの飴を口に入れた。酸っぱいけど、甘い。よく初恋はレモン味とか言うけど、本当にこんな味なんだろうか。

包み紙をとりあえずポケットに入れる。隣を見ると、有野くんの頬が飴玉の丸い形になっていて少し面白かった。

｢甘いね。｣

｢うん。甘い。｣

からころと口の中で転がした飴は、だんだん小さくなっていて、駅につくと気づかないうちに無くなっていた。