8 ページ9
どこまで行くんだろ。昼休みの廊下には人が溢れるほどいる。歩いていると岩泉を見つけた。
「岩泉！ごめん、あとでそっち行くから！」
「わかった。あとでな」
「なにー！Aちゃん来ないの？！」
「後で来るって言ってんだろクソ及川」
及川の襟首を掴んで引っ張って行く岩泉を見送り、再び彼女を追い掛ける。
普段あまり使われることのない階段の踊り場。校内の中心ではないが、教員はよく使う場所と記憶していた。
「あの、」
「うん、何？」
「付き合ってくれませんか」
「あー……」
どいつもこいつも唐突だ。思っていたベクトルと真逆で、松川が言っていた方向の話題だった。深く考えることなく応える。
「ごめん、好きな人がいるんだ。」
「……そか。時間もらってごめんね。」
じゃ、と言って彼女は小走りに立ち去った。
(クラス、居ずらくなるかな)
少し遅れて教室へ戻る。特に早足ではないが、コンパスの差で行きより早く着いた。あの子は席で静かにお弁当を食べている。
胸を撫で下ろし、弁当箱と水筒をエナメルバッグから取り出しいつもの場所へ向かう。
「だー、疲れた」
「おつかれ」
「どうだった！？」
「及川うるさい」
さっさと屋上にいる男バレ3年の輪に紛れる。座りながら愚痴ると及川が騒ぐ。
「だってぜーーーったい告白だったじゃん！！」
「だからうるさいって及川」
「で、どーしたの？オーケーしたの？」
「まさか」
否定すると及川は天を仰ぎながらガッツポーズをし、花巻は表情を変えずに菓子パンを食べ進め、岩泉は「なんでだ？」と及川の頭を抑えつけながら言う。松川はいつも通り、緩く笑ってこちらを見ていた。
「なんで、って。話したことなかったし、」
「A、忘れたの？」
「なにを？」
松川が突然口を開き、俺が何かを忘れていると言い始めた。
「あのコの落し物、届けたのAだったでしょ」
「……そんなことで？」
思い至らなかった俺に松川が助け舟を出すが、とても俺に惚れる要因となることはなかった。
あまり覚えていないが、ものすごく感謝されたことだけは覚えている。大事な物だから、と。
「まぁ、そうだとしたら本当に大事な物だったんだな。」
こんな俺に惚れちゃうくらいなんだからさ、とふざけて言えば「及川さんがヒーローだよ？Aちゃん何言ってるの？」と真剣に言うアホがいた。素でうざいのがすごい。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 158人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
シャバ僧(プロフ) - 優愛さん» ご要望ありがとうございます！負けず嫌いな男主なので、まだ未定ですが、一応別で男主受け松川夢ございます……よろしければ、どうぞ(宣伝) (2022年12月8日 23時) (
レス) id: 97accd6b89 (このIDを非表示/違反報告)
優愛(プロフ) - 主人公は受けがいい!! (2022年12月8日 21時) (レス) @page35 id: 5e22586db0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：シャバ僧 | 作成日時：2022年6月14日 0時
