3Fr�� ページ20
「私、東京に引っ越すことになった」
中学1年の頃。プールバッグ片手に、いつものように並んで歩く道中、Aは遙と真琴にそう告げた。
冬に比べて格段に日が長くなったものの、既に日が傾いている、部活終わりの帰り道。オレンジ色に染まった海岸沿いには、3人の影が横並びに伸びていた。
遙は横にいるAの方を驚いた顔で見つめ、真琴は、えっ、と声を漏らす。
「どうして急に…」
「お父さんの転勤が決まってさ」
真琴の質問にAは答える。
「お父さんとお母さんは、私はこっちに残ってもいいって言ってたんだけどね。親戚の家にお世話になってもいいって」
でも…と、Aは言葉を続ける。
「私は、東京に行こうと思う」
柔らかな風が吹き、短く切り揃えられたAの髪を揺らす。その髪が、光を浴びて1本1本煌めいていた。
戸惑う遙たちとは対照的に、Aの横顔は何かを決意したように、晴れ晴れとしていた。そして、水平線の上で沈みかかる夕日に向かって手を伸ばし、Aは言った。
「もっと、色んな人と泳いでみたいんだ」
遙は、夕日に照らされたAの横顔を見つめる。その瞳には、これから出会うであろう人々の姿を思い描いているのだろうか…。期待の色が色濃く現れていた。
その姿と、小学校の頃、共にリレーを泳いだ少年の姿が重なる。桜の木の下で、遙達に別れを告げた凛の姿と。
きっと、Aの言葉は本心なのだろう。
昔から、誰かと一緒に泳ぐのが好きだと言っていたA。スイミングクラブでは、自分より年上であろうと、異性であろうと構わず、色々な人と泳いでいた。
勝負に勝っても負けても、楽しかったと、嬉しそうに笑うのだ。
遙は、そんな幼馴染の瞳をみつめながら、複雑な思いが込み上げてくる。
ーーお前は、何とも思わないのか。
この町を離れて、知らない土地にいくのに。
ーー俺たちと、離れ離れになるのに。
しかし、真っ直ぐに前を向く横顔に、遙は何も言えなかった。
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ミノ(プロフ) - ちょこれーとさん» 嬉しいコメントをありがとうございます！とっても励みになります！私も遙が好きなんです！これからも気長にお付き合いいただければと思います^^* (2021年6月19日 22時) (
レス) id: 39ed912905 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこれーと(プロフ) - この小説めっちゃ好きです！Free！の映画も楽しみですね。笑 ちなみに、私はハルちゃんと郁弥推しです！これからも作者様のペースで頑張ってください！応援してます(*'▽') (2021年6月19日 22時) (レス) id: 64be1a2e2a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ミノ | 作成日時：2021年5月17日 21時
