牡丹が落ちる時【mfsk】

牡丹43 ページ43

.






｢可愛い娘の頼みだ。世間話はやめにして、本題に入ろう｣



｢お心遣いありがとうございます。｣





｢そらるから先程連絡があってな

なるほどなるほど、これは面白い。あの冷徹なまふまふが手を焼き、困っていると聞くじゃないか｣





そこで一度話を切ると、私を値踏みするように足から頭まで舐めるように見てくる

ゾワゾワっと鳥肌が立って、私は右足をほんの少し引いてしまった





｢その若僧、この組織に入れてやれ｣



｢……本気ですか｣





なぜそうなった
どうしてそうなる



この男の考えていることが全く分からない




そらるさんだってさかたが組織に入ることは反対していたじゃないか

なのになんで





｢残念ながら私の娘は馬鹿で力もなく、逃げ腰で意思も弱い。
私と話している時に目を合わせることすら出来ない弱虫だ

私も跡取りを考える時期。お前の代わりにまふまふが跡取りになってくれるそうだ。
それには色々な経験を積まなければならない、そうだろ？｣





｢私にはわかりかねます｣





知っている。



ずっと昔、跡取り娘として育てられていた私を助けてくれた小さな手を

真っ白なあの男の子が若様だってことを




でも若様はそれを言わないから、私も知らないふりをしているだけだ




私は出来のいいまふまふ様のおかげで、家から見捨てられたのだ

私の望み通りに




跡取りなんか……したくない。







｢あぁ、そうだ。その若僧の補佐にお前が付け。
今を持って、まふまふから離れろ｣



｢………分かりました｣




｢久しぶりに可愛い娘と会話ができて滑稽だったよ

下がれ｣




｢はい｣






昔も今も変わらず、何一つ私は言い返せない
こんなの会話なんかじゃない


一方通行の電報と同じだ

牡丹44→←牡丹42

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す