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突然腕を掴まれるものだから驚いて払い除けようとするも､びくりとも動かない｡同じ魔法学校を卒業し､同じ部隊同じ班で毎日鍛錬に励んでもやはり男女で力の差は歴然とさせられる｡
ゾムはまるで､私の瞳の奥を覗いているのかと思ってしまうほど強い眼光で私を見つめる｡
その目線を逸らせず逃げ出せない私はごくりと固唾を飲み込む｡
｢初恋がそんなに特別か?｣
｢一概にそうだとは言えないけど､9割の人はそうだと思うよ｣
｢なら､俺の初恋も特別にしたってや｣
私の腕を掴んでいた手をは離され､するりと手首を伝って指を絡ませながら互いの掌を合わせる｡
こんな繋ぎ方されたの初めてで､不慣れな事にドギマギしてる私とは正反対にゾムは落ち着いて見える｡
俺の初恋､なんて言ってるけど本当は嘘なんじゃ…と考えていたのもゾムには透けきってて､そんなわけないやんと軽く笑われた｡
｢ゾムは私の事好きなの?｣
｢好きかもしれん｣
｢かも､って…｣
｢お前を見てたら胸が苦しくなる｡他の奴を見てたらイラついて俺だけ見ろって邪魔してまう!でもお前が俺に笑ってくれたらどうでも良くなる､後お前に見つめられたら…｣
｢な､何｣
｢……だ､きしめたく､なる｣
少し口篭りながら､ゾムは顔を赤くさせる｡
私はゾムのこと同僚だとしか思ってなくて､いやそれ以前にゾムは魔法学生時代に多くの女子生徒にモテていたから､まず初恋っていう事実を受け入れられない｡
ましてはその相手が私なんて､そんな事あるの?
｢なあ先生､俺のこの気持ちが恋やろ?｣
｢初恋は好きかもしれないっていう不確定な場合が多くて､ゾムくんのはその不確定なもので､本心ではない可能性も…｣
｢ある訳ないやろ!｣
｢いやでも根拠ないし｣
｢この胸の苦しみが根拠や｣
繋がれていないゾムの左手が､私の髪をサラリと梳く｡優しい手つきで､なんだか落ち着かない｡
私の胸がドキドキと音を鳴らすのは､ただの同僚だと思っていたゾムがいつもと違うから､私に触れる手が丁寧だから､私を愛おしい目で見てくるから｡
だから､絶対違う｡私がゾムの事好きだからこんなに熱くなるなんて無い｡
｢意識してや｡俺はAにだけ見てもらいたいねん｡だから､俺を見てくれ｣
頷けば､ゾムは満足したのかいつものニカッと太陽のように眩しい笑顔になる｡
そんな笑顔にも､鼓動が早くなった事がどうかバレませんように｡そう､心の中で祈るしかなかった｡
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