未定-zm- ページ35
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｢なぁ先生教えてや｡恋って何なん?｣
私のデスクにさも当然かのように居座り､机に肩肘を置いて頬杖を付いて先程の質問をしてきたゾム｡
私とゾムの関係性を簡単に言えば同期の同僚｡
更に詳しく言うと､同じ魔法学校を卒業した後に王国直属の魔法部隊へ入隊し､数多い班の中からトントン班長にスカウトされ､私達は班内唯一の同期なのだ｡
…なんて､恰も私達は対等ですという言い方をするが､私よりも魔法威力もコントロールも優れているゾムと同期だなんて､私は胸を張って言えるほどの実力は無い｡
｢恋って､今日は難しいテーマだね｣
｢初恋がまだやからよう分からんねん｣
しかし､唯一ゾムに勝てる事がある｡
それが知力｡と言っても､ゾムは決して馬鹿ではない｡
ゾムは魔法学の授業の成績はいいのだが､生憎ほかの座学が興味が無いのか余り良くはなかった｡
そんなゾムが先輩達や他の同期に聞かれた質問に上手く答えられず困っていた時､同じ班の好だと私が知恵を貸した｡その結果が先生呼びだ｡
何か分からない事があればあれば直ぐに先生先生!と私の元にやって来るので､最近はこれが生徒に懐かれる先生の気持ちか…と少しだけ教員を目指す人の気持ちが分かってしまった｡
｢先生は恋した事あるん?｣
｢あるにはあるけど…そんな面白い話では無いよ｣
｢面白いとかどうでもええわ｡なあ､どんな感じやった?｣
｢私は苦しかった思い出しかないよ｡初恋の人にはもう相手がいてね｡なんで好きになったんだろうって毎日嘆いてた｣
苦い初恋を思い出しては､本当になんであの人を好きになったんだろうと後悔してしまう｡
人生で1度しかない初恋を台無しにしてしまった事を思い出すことはあまり良い気持ちにはならない｡
ゾムはそんな私の心情を察したのか､申し訳なさそうにシュンとする｡その姿が叱られた後の大型犬のようで､幻覚で項垂れてる耳が見えた｡
｢嫌な事思い出させたな｣
｢気にしないでいいよ｡まあ､恋は必ずしも甘酸っぱくて鮮やかなものではないっていうことしか教えられないけどね｣
｢初恋ってそんな忘れられへんもんなん?｣
｢人生で1度､初めての恋っていうのでちょっと特別な思い出になっちゃうから簡単に忘れられないんだ｣
忘れられるなら忘れたいけどね､と苦笑いを浮かべるとゾムは苦虫を噛み潰したような苦痛の表情をする｡
どうしたのか聞く前に､強い力でゾムに腕を掴まれた｡
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