・ ページ4
.
「トントン！見て！」
部屋に着くなり見せられたのは、きっと今日返されたテストの答案用紙。
自信満々に広げられたそれには相変わらずバツがたくさんついていたが、右上に書かれた数字は最初に見せられたものよりだいぶ増えていた。
「こんなに点数採れたの小学校ぶりだよ！すごくない？」
「まじか」
「私トントンと真面目に勉強したもんね！」
「半年でこれだけ伸びるんか、中学生すげー」
「出会った時に言ってたこと、やっとわかったわ」
「俺何か言ったっけ？」
俺に出会えてよかったな、Aはパチリと綺麗にウインクしながらそんなことを返してきた。
が、俺はそんなことしてへん。
そんなようなことを言った覚えはあるけれども、それは「今からちゃんと大人と勉強すれば巻き返せるぞ」の意味であって、勝手にそんな歯の浮くようなセリフに変換すな。
こんな風に脳内で必死に弁解して、でもかっこ悪いからその言葉を飲み込んだ。
こういう余裕の無いところが童帝って言われるところなんやろ、勢いのまま口から出さへんくて良かった。
「ま、頑張ったんちゃう？」
「やろ！頭撫でてもええんやで！」
「は？」
「すみません調子に乗りました」
何やコイツ、予想の斜め上をいつもいつも飛んでいくな！
ひとつ大きなため息をついて、出来るだけいつもの調子でパイプ椅子に座る。
するとAもいつも通り自分の椅子に座って、なんだか申し訳なさそうに視線を下げている。
「怒らせたとか思っとん？」
「……だって、いつも以上に大きいため息やんか」
「あのな、怒ってんとちゃうよ。でもそういうのは、軽々しく男に言っちゃあかん。世の中勘違いする人間のほうが多いんやで？そこから付きまといとかストーカーとか、洒落にならへん事件に発展するんやからAも今から気を付けんと」
「……心配してくれとんの？」
「そら心配もするわ、中学生やぞ」
「なんか、トントンってお母さんみたい」
「それはお母さんに失礼や」
それに、俺が頭撫でても何のご褒美にもならへんし。
Aが残念そうに口を尖らせてる理由がわからへん。
きっとこういうところも俺の悪い所なんやろうけど、自分が間違っているとは思わん。
後でお母さんにご褒美買ってあげてくださいって言っとこう。それが多分、最善や。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 57人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「wrwrd」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
