【d!】恋とは一体、何たるや。【初恋企画】 (ページ28)

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耳を劈くような大声に驚き、一瞬ロボロに目を向けてからまた彼女に横目で視線を戻す。と。ぱちりと、目が合った。視線の先の彼女は少しだけ目を丸くすると、直ぐに目をそらしてしまった。なんだそれは、なんでこっち見て。

「は」

そのままおれは放心状態のまんま。LHRが終わって、日直の号令でみんなは荷物を持ってゾロゾロと教室を出ていく。彼女も友達と一緒に出ていってしまった。部活とかやってんのかな、帰宅部なんかな。

「…なにしてんねんシャオロン、帰るで。」
「…あ、うん。」

ゾムが動かない俺を見兼ねて声をかけに来た。気づかないうちにかなり時間が経っていたらしい。日直も日誌を書き終えて帰ってしまったみたいだ。トントンのノートを写させてもらおうと思っていたのも忘れていた。もうコネシマはどうせ写し終えただろう、めんどくさいな。

「お前遅すぎ、なにしててん。俺は購買行っとったからええけどさあ」
「…や、なんも。」
「ロボロとシッマとトントンは先に帰ったで。」
「あー、ごめん」
「…何やお前、なんかあったんか。」

廊下をゆっくり歩く。おれがぼーっとしてるからゾムが歩幅を合わせてくれているんだろう。けどゾムの話があんまり耳に入ってこない。…ずっと、一つだけ、あの瞬間から気掛かりで、気になって気になって、仕方ないことがあった。

「………なんでさっき目合った時、耳赤かったんや。」

「は？なんて？」
「……なんかおれ、好きな人できたかも」
「は？お前に？」
「うん」

恋だと思ってしまえばその言葉はストンと胸に落ちてきた。初恋が一目惚れとかっていうのも、まあ悪くないかもしれない。
なんだか急に元気が出てきた。さっきまで頭に何も入ってこなかったのが嘘みたいだ。恋ってこんな感じなんや、彼女の微笑みを思い出すと自然に笑顔になってしまうし、やる気が出てくる。

「えっ、誰なん？」
「…んー、A！よし帰るで！」
「はっ？Aさん？っておい急に走んなや！」

気が早いかもしれないけれど、どうやって落とすか考えるのもなんだか楽しみだ。なんだかおれにならできるような気がしている。不思議と彼氏がいるとかどうかなんて事は思い浮かばなかった。この初めての感覚がどうにも心地よくて、むず痒くて。後ろから聞こえてくる怒声も無視して、明日また教室で会うのを楽しみに、階段を駆け下りた。