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***
昼食を半ば無理やり詰め込んだ私たちは、夕飯も食べずお風呂に入って早々に部屋へと籠った。
しかし、皆に合わせて夕飯を食べなかったからかいつもと違う寝具で眠れない私はそっと部屋を後にした。
別荘内は涼しくて、月明かりが青白く廊下を照らしている。彼らの部屋とは少し離れているから、私の足音しか聞こえなくて。少しだけ、寂しい。
『…綺麗。』
ぼんやりと揺れる月を窓から見かける。もっと近くで見たくて、バルコニーの扉を開けた。
夏とは言え、夜は少しだけ肌寒い。
何も羽織らずに来たのは愚策だった。暖を取るように自らの肩を抱くが、あまり意味はないようだ。
『…』
？｢こんな時間に何しとんの？｣
何も考えず水面を眺めていれば、背後から急に声を掛けられたために大袈裟に肩を揺らしてしまった。
勢いよく振り返れば、いつにも増して顔色が悪く見える彼が佇んでいた。
『…あなたこそ、こんな時間にどうしたの』
ut｢まさか質問返しされると思わんかったわ。寝とってんけど、足音聞こえたから。で、Aちゃんの後ろ姿見えて追いかけてきた｣
『それは、ごめんなさい。起こしてしまって』
ut｢ううん、ええんよ。そんなガッツリ寝てたんちゃうから。｣
ふんわり微笑んで隣へ並んだ彼は、同じように水面を眺める。彼は、何と言うか…。海底のようだなと思う。抽象的すぎるかもしれないけれど、表面的な事しか知らないし、分からない。
彼の底深くにあるものは、感じ取れないのだ。
ut｢んふ、案外Aちゃんって気にしいよな。なぁんも気にせんでええよ。｣
『気にしい…。別にそんな事ないわ。』
ut｢いっつも、求められる姿でおるんはしんどくない？ほんまの君は、｣
『知ったような口を聞かないで。あなたに、何が分かるの。』
つい、口を荒らげてしまった。
すぐに口を噤むが、出てしまった言葉は戻ってこない。一瞬だけ表情が消えたウツは、すぐに柔らかい笑みを浮かべてその真意を隠した。
ut｢…そうやね。ごめん。無神経やった。これ、着なね。寒いやろ｣
『い、いいえ…。私の方こそ、一方的に声を荒らげてごめんなさい』
ut｢ほら、Aちゃん気にしいやん。ええって。早めに寝るんよ、おやすみ｣
『…おやすみなさい』
彼は着ていたカーディガンを私に手渡し、廊下へと戻って行った。
遠慮なく羽織るけれど、欲しい暖かさは一向に感じない。
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ちぇる(プロフ) - かなさん» コメントありがとうございます！そう言っていただけて本当に嬉しいです。こちらこそ読んでいただきありがとうございました！ (2022年10月31日 18時) (
レス) id: f71e4746a6 (このIDを非表示/違反報告)
かな(プロフ) - 完結おめでとうございます〜！！悪役令嬢もので1、2位を争うくらい好きで、夢主ちゃんの性格も本当に好きでした！！楽しい時間、ありがとうございました！ (2022年10月31日 18時) (レス) @page47 id: 139b3f8cfd (このIDを非表示/違反報告)
ちぇる(プロフ) - あいかわさん» コメントありがとうございます！楽しんでいただけてよかったです！ (2022年10月31日 14時) (レス) id: f71e4746a6 (このIDを非表示/違反報告)
あいかわ(プロフ) - 完結おめでとうございます！最後まで楽しく拝読させていただきました。これからのご活動も陰ながら応援しております！ (2022年10月31日 12時) (レス) id: 339f3cd750 (このIDを非表示/違反報告)
ちぇる(プロフ) - ゆるぽろうさん» ありがとうございます！ずっと悪役令嬢ものは書きたかったので、今回書けて良かったと思っています！ (2022年8月18日 8時) (レス) @page4 id: f71e4746a6 (このIDを非表示/違反報告)
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