帰還 ページ43
***
ふと目が覚めた。最近は聞いていないような組員の人たちの声。更には物音。
枕元に置いてあったスマホを確認すれば、まだ朝の五時半である。こんな早くからどうしたのだろうか。
襖から顔を覗かせると、まだ空は紺色のままで仄かに東の空は起きようとしているらしかった。
ぼんやりと朝の空気を鼻腔いっぱいに感じていれば、数人の組員さんたちが通りかかる。
「あれ、おはようございます。もしかして、起こしちゃいましたか」
『元気な声がするなぁと思って』
「あーすみません!俺らもまだ後始末がありますんでこの辺で…。詳細は兄貴らに頼みます!」
頬に痛々しい傷を作って帰ってきたらしい彼らを見送り、部屋にいても仕方ないと洗面所に向かう。
見覚えのある後ろ姿だ。なるべく足音を立てずに近づくも、容易に気づいてしまった彼が振り返り顔を明るくさせた。
ci「あ!A〜!会えんくて寂しかったやろ?!」
『いえ、二日前に見送りましたよね?』
ci「俺は会えんくて寂しかった!てか、めっちゃ仕事頑張ってんで?!褒めてや〜!」
『あの…抱きつかないでもらって』
ci「誰や!Aに余計なこと言うたん!」
誰にも言われてませんが?チーノさんは最近やけに絡んでくるなぁ。胡散臭いところがあるから怖い。
考えていることが分からないというか、読めないというか。
shp「…何騒いでんのチーノ。あれ、おはようA。もう起きたん?」
『あ、はい…まぁ。元気そうな声が聞こえたので』
shp「つまり騒がしかったと」
否定出来ないため何も言わない。すると死んだ顔をしていたショッピさんは楽しそうに笑う。
「無言は肯定すんのと一緒やで」なんて言われたが、起きるほど騒がしかったわけだし…。
あれ、でも組員の人たちが帰ってきてるってことは…。
『あの、もしかしてみなさん帰ってきたんですか?』
shp「あーうん。無事に、な。」
ci「Aずっと心配しとったもんなぁ。ええなぁあいつら。俺ら帰る頻度高かったしそこまで心配されてへんかったもん」
『…朝ご飯作りますね』
帰ってきたんだ。約二ヶ月ほど会っていなかった人もいるわけだし、ろくな食事をとってないだろう。休めるように柔らかいものの方がいいのかな…。
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