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重い足取りで彼に気づかれないように進むも、やはり普通に気配を感じたのかバレてしまった。
彼の黒い髪が月明かりに照らされて銀色に輝く。
『あ、えっと…。こんばんは』
tn｢…すまんな｣
『ま、待って！…ください』
私が口を開いた瞬間、逃げるように踵を返そうとしたトントンさんを呼び止める。彼は、踏み出そうとした足を戻した。それでも、振り返ることはない。
『私、ずっと謝りたくて』
tn｢…何をや？｣
『トントンさんが、誰よりも組のみなさんのことを大切に思ってること。それなのに、私』
tn｢別に、気にしとらんから。寒いんやし、はよ部屋入り。｣
一向に振り向いてくれないトントンさん。気にしてないなんて嘘だ。私が彼を傷つけてしまったんだ。
『本当に、ごめんなさい。』
tn｢ええよ、謝らんで。ほら、はよ入り｣
漸く振り返った彼は、私の手を引いて部屋に押し込む。決して顔は見せてくれなかった。
謝ったところで彼の傷が癒えるわけじゃない。謝罪なんて自己満足に過ぎない。でも、他にどうすれば良かったんだろう。
『…さむい』
十一月も下旬になり、用意されている布団が冷たい。人肌が恋しい。私一人のために用意されたこと部屋は、いつもより広く感じる。
『ごめんなさい、とんとんさん…』
凍える体を抱きしめて落ちていく意識に身を委ねた。
*
『ごめんなさい、とんとんさん…』
ほんまに、そこまで気にしてる訳じゃなかったんやで。俺は、余裕そうにしとかなあかんかったから。
若頭として、抗争くらいで焦ってられへん。親父から何回も言われた言葉。それを律儀に守って、何があってもこの家は俺が守ると闘いに行ったあいつらを見送った。
それが、まさか裏目に出るとは思ってなかった。ただの、一般人であったAに怖くないのかと聞かれて心臓が跳ねた。
初めて、俺の抱えているものを吐露した。昔から一緒にいるあいつらにさえバレないようにしていたのに、彼女の真っ直ぐな瞳には何も隠せなかった。
こっそりと襖を開けて眠るAの顔見つめる。まだ、未成年の彼女にここまで絆されると思っていなかった。彼女がこの組に
tn｢…俺が、守るから｣
綺麗な黒髪をひと房とってキスを落とし、部屋を後にする。あと、もう少しで終わるんや。
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