【d!】最低な祝福、キスを落として。 (ページ40)

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今、この組の中で一番落ち着いているであろうトントンさん。困ったように笑顔を浮かべて、未だ玄関にいる私たちを中に入るよう促す。

tn｢そんなとこおってもしゃーないんやし、居間おりや。な？｣
rbr｢…せやな。Aさん、行こう｣
『トントンさんは、怖くないんですか？』

聞いてしまった。もう、後戻りは出来ない。何て答えられるのか分からない。
隣にいるロボロさんの視線が刺さる。何を聞いているんだと、そんな空気が流れているように感じた。

tn｢…なにがや？｣
『私とあなたたちが住む世界が違うことなんて、百も承知です。その上で、こうやって死人が出るかもしれない』
rbr｢…Aさん｣
『仕事だからと出て行った彼らの命は、どうなるんですか。知人が死んでしまうかもしれないのに、何でそんなに余裕そうなんですか。』

こんなふうに責め立てるつもりはなかった。でも、あまりに危機感のない表情をするものだから苛立ってしまう。
一般人には分からないだろう、なんて言われてしまえばそこでお終い。組の人間になったわけでもない私が、口を挟んだところでこの抗争は終わらないし。やめてもくれないだろう。

重い空気の中、トントンさんは漸く口を開いた。

tn｢…そんなん、怖いに決まってるやろ。毎日顔を合わせるあいつらが、もし重傷を負ったら…？死んだら？とかずっと考えとる。｣

さっきまでの優しい表情は消えて、苦虫を噛み潰したような、苦しんでいる表情をする。

tn｢怖くないわけないやろ。それに、あいつらが必死に他の組とやってる間、俺はずっと家ん中や。俺が直接あいつらを守れへんのが悔しい｣

私、本当に酷いことを言ってしまったんだ。彼だっていろいろ考えているはずなのに、最低だ。

tn｢…部屋行くわ。ロボロ、頼むで｣
rbr｢あ、おう。｣
『私、酷いこと言っちゃいましたよね。』
rbr｢Aさんは、俺らに世話になっとるだけでただの一般市民やからな。分からんでもしゃーないよ｣

今は、その優しさが痛い。トントンさん、きっと怒ってる。謝らなきゃ。

そう思っても、彼と会う時間は無いまま__。