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目が覚めると、知らない部屋。ああ、そうか。昨日ヤクザの人たちに…。
そういえば、私が住んでたアパートはどうなったんだろう。荷物だって全部置いてきたままだったし。
…頭痛いな。昨日は泣いてそのまま寝てしまったみたいだし。お風呂にだって入りたい。入りたいけど、場所もわからなければあの人たちに頼るのもな、と思ってしまう。
もう、私に家族はいないし。何故生かされているのかも分からない。でも、今日から仕事があるって組長さんは言ってたしなぁ。
『…死んじゃうのかなぁ』
小さく言葉を零せば、襖の向こうに誰かが立っていることに気づく。入ってこないのかな。
『あの』
?「あ、あ、すみません。入っても大丈夫ですかね…?」
『はい、どうぞ』
静かに開かれた襖。立っていたのは、体格の良い男性。昨日は見ていない人だ。
私を呼びに来たのだろうか。申し訳ない。
?「いきなり入るのもなと思って…すみません。僕は、
『あ、いえ…。そこまで詳しくは知らないですけど、お名前だけは存じ上げてます。』
tn「とりあえず、昨日風呂も入れんかったと思うんで着替えとか色々お宅に取りに行きました。案内します。」
『わざわざ、すみません』
何だろう、割とまともな人なんだな。桃瀬、屯平さん。シャオロンさん?とは違ってちゃんとしたお名前なんだなぁ。あだ名だったのかな?
tn「あ、ここです。風呂。着替えはもう置いてます。」
『はい』
tn「出た頃にまた迎えに来るんで、ゆっくり出来ないとは思いますが…。」
『ありがとうございます…』
昨日の光景を見た後だからか、この人が誰よりも人間らしいというか。普通というか…。それでも、ここに住む人間なのだから、あの人たちと何も変わらないんだろう。
その事実に身震いするけれど、今は何よりもお風呂だ。早く、さっぱりしたい。
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