【d!】落日を刻む (ページ6)

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4.消えない不安ページ6

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私とグルッペンの二人になった談話室。
私がいるからとこの場に残った彼は、ソファに腰掛けて未だに立ったままの私に手招きする。

gr｢座れよ。立ちっぱなしでいるつもりか？｣

『あ、うん。そうだね』

二人の間に、これといった会話はない。
どうやって話していたんだっけ。二人きりになることなんて、昔に比べれば少なくなったから、話の切り出し方も分からない。

今から話すことは、全部ネガティブなものになりそうで。折角頑張ろう、という気持ちになったのにそれを踏みにじるような気がしてならなかった。

gr｢…はぁ。何思い詰めた顔してんねん｣

『え、そんなふうに見える？』

gr｢あのニュース見てからな。｣

『…だって、もしこれで助からなかったらと思うと』

不安で仕方ないまま、彼に思っていることを伝えれば呆れたように息を吐いてそっと私の頭に手を置いた。

gr｢心配するな。絶対に何とかなる。…それに、まだ約束も果たしてないだろ｣

『…え、』

彼の言う約束。それは、今から十年ほど前のあの日のことだろう。
まさか、覚えてくれていたなんて思ってもみなかった。驚きで何も言えない私が面白かったのか、小さく吹き出した彼は立ち上がり扉へと向かう。

gr｢ほら、もう部屋に戻るぞ。明日から忙しくなるんだ。…おやすみ｣

『お、おやすみ』

あの日の幼稚な約束を、覚えていてくれた。
私だけだと思っていたのに、彼は、グルッペンは覚えてくれていた。その事がどうしても嬉しくて、心臓が苦しくなる。

自覚はしている。でも、これを伝えて何になる？

私たちが今しなければならないのは、この星からの脱出であり他のことに時間を割いていいわけがない。気持ちに蓋をすることは出来なくても、伝えなければこの気持ちは育ててもいいよね…？

少し経って落ち着けた私は、談話室の電気を消して自室に戻った。
瞼の裏には、あの日のグルッペンと、さっきのグルッペンが浮かんでいた。