19.助かる方法 ページ21
***
いつもは柔らかく発声される声が、私たちの重い雰囲気を払拭するように鋭く通る。
em｢助かる方法はあります｣
sha｢…助かる方法、あるん？｣
em｢はい。あります。…ですが、｣
彼の一言は私たちの空気をすくい上げ、助かるという希望を見せた。
一瞬にして暗かった表情が明るくなったにも関わらず、言葉を続けるエミくんの表情は浮かないまま。
『エミくん、？』
em｢……全員が、助かることは出来ません。｣
ut｢は、？なんで｣
em｢皆さんが知っているのかは分かりませんが、国際宇宙船チケットの抽選があったんです。｣
『国際宇宙船チケット…？それって』
em｢この星に住む人なら誰でも応募可能であり、抽選は完全に公正なものである。無能な国際機関が唯一役に立った事例です。｣
そんなのがあったなんて、全然知らなかった。
孤児院にいる私たちは、文字が書けなかったり読めなかったりする子もいたからインターネットでさえ扱えるのは、エミくんにウツの二人だけ。
em｢…みなさんが鼓舞しあって頑張ろうとしていたあの時に、どうしても水を差すようになる気がして言い出せませんでした。当たるかも分かりませんでしたし。｣
『あの時言ってたやつか』
em｢はい。Aさんに背中を押してもらえなかったら、きっとこういった結末にはなってなかったはずです。｣
そっか、あの時。何か考えがあるんだとは思っていたけど、まさか宇宙船のチケット抽選だったとは思わなかったな。
em｢結果的にチケットは当たりました。ですが、全員分ないんです。…助かるのは、五人だけ｣
shp｢五人、ですか｣
em｢そもそも、これだけの枚数当たるだけ奇跡なんです。何せ、世界中の人間が応募してますから｣
確かに、この星に住む人たち全員が応募出来る中五枚も当たるのは奇跡としか思えない。
だとしても、だとしてもだ。全員が助からないなんて、あんまりじゃないか。
kn｢俺は死にたない｣
gr｢そんなん言い出したら全員死にたくないやろ。…決めよう、これから。｣
益々近づく死への恐怖に物怖じしたのか、らしくもない言葉を放ったスカイブルー。
そんな彼を見てリーダーとしての役割を果たすべく、グルッペンが静かに喉を震えさせる。
gr｢誰も後悔しないように。｣
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