〜第一章〜 海 【歌い手】 2

【71】そらる ページ21

そらる side



『よし、一抜け』
「強すぎない？」
「相変わらず強い…」


お金がかかると人は変わるんだなと言うくらい
みんな、自分も含め本気だった。


しかし、スマブラ馬鹿Aは
なんと三スト残したまま俺らをぶっ飛ばした。

ｸｯ…俺らだって弱くないはずなのに！！


そして今はまふまふ、俺、米津くんの三人でプレイ中。
Aくんが抜けた今、この戦いで最初に死んだ人が奢ることにすると決まったのだった。


ちなみに、夢の国だとして、約4万近いだろ？交通費もとなれば…

負けられｎｯ…


『夢の国…行ってみたいです…』


じーと、俺を見ながら、まるで子犬のように見つめてくる。


「よし、そらるくん、負けて」
「そらるさん、負けてください」


…こいつらはAになると甘い。
米津くんはAの大好きなおつまみをいつも常備してるし、まふはいっつもツイートを待機している。


夢の国…



(夢の国…行ってみたいです…)



は、やだよ。俺負けたら全員分だろ？







〜翌朝〜




目が覚めるとそこは
ソファーの上。


あぁ、昨日俺…負けたんだった…




五万が…！！！！！！





油断している隙にAくんにキルを取られ、
見事にフラグを回収した。


立ち上がり、ふらふらと歩きながらシャワーを浴びる。

断続的な音が続く中Aのことが浮かんだ。


腕の傷も、心の傷も、音楽にぶつけて発散できているんだろうなと思っていたけど、所詮、まだ子供。

俺らが大人だと思っているけれど、彼の心は繊細。発散しきれないほどのものを抱えているのだと気づいた。


シャワーを止めて、出て、髪をタオルで拭きながら、スマホを開くと見事に一月一日。(当たり前なのだが)

昨晩の0時過ぎにあけおめツイートをしたものの、初詣とかおせちとかなんかあるだろ。

リビングにはまふとA。
このカオスな程の雑魚寝。

まふはAに絡みつき、そして抱き枕にされてるA。

新年だからこんなにゆっくり行動なのか、それとも単にバカなのか。

米津くんに関しては布団で寝てるけど、布団は落ちかけ、枕に関しては落っこちている。

布団をかけ直してやってリビングに戻ればポットに水を入れて勝手に沸かす。

もう、どうにでもなれと頬から笑みが溢れる。




あぁ、なんか幸せだな。

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