君が好き。〈stpr 短編集〉

ドリップコーヒー【黄】 ページ6

*


「はぁ、今日も暇だなぁ」

私のアルバイト先は誰もが知ってる某有名な珈琲店。
それなのにこの店舗には全然お客さんが来ない。

「表通りに広い系列店ができたばかりだからね、まぁその内お客さんも戻ってくるよ」
そう言って裏に戻っていく店長。呑気ですね...。


「いらっしゃいませ〜あ、黄瀬さん！」
やっとお客さんが1人。

「Aちゃん、こんにちは。今日も1人で回してるんですか？」
「回してるって言ってもお客さんが来ないので...店長は裏にいるんです」

この人は黄瀬さん。最近通い始めてくれた背の高い男の人。
最初見た時はモデルさんが来たのかと目を疑うほどに顔が整っている。

「ご注文はいつものドリップコーヒーtallサイズ、お持ち帰りで宜しかったですか？」
「はい、よろしいですお願いします」

クスッと笑いながら返事をしてくれる黄瀬さんは
その端麗な見掛けとは裏腹に、ハムスターのような可愛さを持っていた。

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