【第五人格】納棺師くんと占い師くん(続) (ページ2)

今日:3 hit、昨日:1 hit、合計:10,036 hit

･ページ2

…そんなの無茶苦茶だ。

人の気持ちなんて天気と一緒でころころ変わるものだろう。

いくら相手が愛していたからといってこっちも愛さないといけない訳では無い。

…でも、愛されて嫌な人は居ないはず。

そうか…愛されると自然とこちらも愛を返したくなる。

give and take.

そんな言葉が頭をよぎる。

｢嫉妬は相手を疑うことでもあるだろう？｣

｢…！｣

そうか…僕は、自分勝手な思い込みに囚われ、肝心の相手の心を無視している。

イライさんがいつ、僕を好きじゃないと言った？

相手の想いをよく知ろうともせず愛してくれてないなんて勝手に思い込んで。

大切にされてない、なんて被害者ぶって自分から殻にとじこもろうとしていた。

なんて愚か…。

｢イライさんすみません！｣

｢え？｣

｢僕…勝手な思い込みで突っ走ってこんな…｣

｢…？なんの事だか分からないが、私は何も怒ってないよ｣

そう言って僕の頭を優しく撫でる。

…イライさんはいつも、イライさんなりの愛を表現してくれていた。

嫉妬をしないのは僕を信じているから…。

付き合っているのにあまり触って来ないのは僕はそもそも人が苦手だから。

思い返してみれば彼からの愛はしっかり僕に与えられていたんだ。

いつも一番に僕のことを考えてくれる。
…それがイライさんの愛。

｢イライさん…ありがとうございます｣

愛は多種多様であり、愛の形も様々だ。

支える愛。尽くす愛。守る愛。など

それらは全て相手を想う深い愛情からなる。

僕の愛は何だろう？

｢君から抱きついてくるのは初めてだね｣

｢…本当はずっとこうしたかったんです｣

こんな事をして嫌われたりしたら…と悪い方に考えてしまい、怖くなって、結局いつも出来なかったのだ。本当はもっと…

イライさんはギュッと抱き締め返してくれた

チラリとイライさんの顔を覗き込むと頬が少し赤く、口元は笑っていた。

イライさんの表情の全部が見たくてスッと目隠しを取った。

彼は、眩しいくらいの笑顔をしていた。