【第五人格】納棺師くんと占い師くん(続) (ページ26)

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甘い毒。ページ26

不思議で堪らなかった。
何にも興味を示さないその瞳が。

けど、偶然見てしまったんだ。
棺の人形を見て恍惚な笑みを浮かべる彼を。

「やぁ、良い夜だね」

「…また貴方ですか」

しつこく話しかけていたら教えてくれた。
彼は生きている者に興味は無いのだ。

関わらないでくれ、とまで言われてしまったのだが、どうしてもあの表情が忘れられない私は構わず彼に話しかけた。

…ある日突然、チャンスが訪れた。

ゲーム中、何とかハンターをまき、たまたま自分が納棺された棺の傍を通った。

納棺し終えた直後なのか、私そっくりの人形をじっと見ながら何かを呟いている。

物陰に隠れて聞き耳を立てる。

「あぁ…なんて美しいんだ」

「…！？」

いつもより低い、吐息混じりの声。

こちらには気付いていないようで、まだ棺の中の私に話しかけている。

「イライ…貴方は誰よりも美しい目をしているね…素敵だよ…」

次々に紡がれる甘い言葉にぞくりとした。
目？こんな目のどこが素敵なんだ。

「でも君は眠っている方がいい」

起きている私には興味が無いと言いたいのか

自分と瓜二つの人形に対して嫉妬のような表情を覚えた僕はどうかしているのかもしれない。

彼の言葉が私を刺す。ゆっくり、ゆっくり蝕んでいく。彼が放つ甘い毒に侵される。

耐えられなくなった私はおぼつかない足取りでその場をあとにした。

そんな足取りの私はハンターのいい的で。いつもなら避けれたはずの恐怖をくらい、縛られる。

肩の上の相棒は『どうして』とでも言いたげな瞳で私を見た。目の前が暗くなる。

目を開けると先程見た棺の中だった。

力無く倒れ込む身体は何者かによって抱きとめられた。

目の前には異様に口角を釣りあげた、彼…？

「あぁ、イライ…僕のイライ…」

私の身体を強く抱き締めると、深い、深い、キスをした。

唇を繋いだ銀の糸はぷつりと切れ、私の口からはだらしなく唾液が垂れた。

彼の生温い舌がそれを拭う。

果たして彼はこんなだったのだろうか？
…あぁ、もう思い出せないな。

目の前の悪魔が再び笑う。

「やっと…僕の物になった」

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蒼い瞳の青年は、自分を見つめ、微笑んだ。

胸に紅い花を携え、呟く。

「やっと彼の物になれた」

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この話では納棺＝死を表します。