【第五人格】納棺師くんと占い師くん(続)

イライさんの誕生日 ページ16

「イライさん！」
「お誕生日」
「おめでとう！ / なの！」

「はは、ありがとう」

10月31日、今日はイライさんの誕生日。

朝から荘園の皆さんが騒がしかったのはそのせいだったのか。

僕も今日になるまでイライさんの誕生日を知らなかった。

いつものように端からイライさんを見る。

大勢に囲まれて恥ずかしそうに笑うイライさんがなんだかいつもより遠い人に思えた。

いや、…元々そうじゃないか。

イライさんとはたまに話すくらいの仲で、それ以上でも以下でもない。

友人ですらないのに。

彼はいつも優しく微笑み、たどたどしい僕の言葉を静かに聞いてくれる。

不安な時は声をかけて安心させてくれた。

いつも端っこで小さくなっている僕の傍に来て、話しかけてくれた。

最初は嫌だったけど、イライさんのまとう空気に緊張感なんてほぐれていって、部屋の隅にいる回数も減った。

…気付けばずっと目で追ってた。

でも、この想いは許されない。
許されるべきではない。

こぼれそうになる涙を必死にこらえ、彼の元へ向かう。

今日は彼の晴れ舞台。
そんな日に涙を流すべきではない。

このプレゼントを渡して終わりにしよう。

「イライさん、おめでとうございます」

そう言って僕はベゴニアの花を渡した。

冷たい夜。→←僕だけの秘密

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