36色 ページ38
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どこか幼さを残す顔立ちだが、ゴツゴツとした手のひらに引き上げられて、ようやく地上に出る。
けほっ…
埃っぽいな…
「ゴホッゴホッ……君、知ってるぞ…穴掘り小僧だな」
「綾部喜八郎です」
「滝夜叉丸から聞いているぞ…穴掘り小僧…ごほっ」
「綾部喜八郎ですってば」
「それで…喜八郎」
「なんでしょうか保科A先輩?」
なんでしょうか、じゃないだろう。
お前のお陰で全身土埃まみれなんだぞ。
言いたいことは山ほどあるが、それよりも先ず。
「僕にずっと落ちて欲しかったって…なんでだ?」
自分で言ってなんだが、かなり不穏な響きだ。
すると、喜八郎ははァ、とため息をついて、顰めつらしい顔でこう言った。
「いいですか先輩…この忍術学園の門を、初めてくぐったあの日を思い出してみてください」
「あの日…」
なにかあっただろうか…
「特に何も無かったけど…」
「そう!それが問題なんですよ」
「え」
な、何なんだ?
喜八郎は片手に鋤を握ったまま、人差し指をくるくるさせながら、続ける。
「僕はあの日、いつものように学園中に落とし穴を掘っていたんです。けれど、先輩は1度も落ちない、かすりもしない」
「忍者の卵として、立派じゃないか?」
「僕の作った落とし穴に必ず落ちる。これはこの世界のルールです」
善法寺伊作先輩を見習ってください、とぷりぷりしだす喜八郎。
言ってることはさっぱりだが、なんとなく先は読めたぞ。
「それで、意地でも落とそうとしたんだな」
「ええ。けれど、まだ駄目です。先輩から落ちてくれなければ」
「なんのこだわりなんだ…」
「そもそも、学園中に落とし穴を掘るだなんて、良くないんじゃないか…?」
「そんなことありませんよ」
「えっ、ちょ」
ぐいっと、先程の落とし穴より、さらに深い落とし穴に引き込まれた。
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睡蓮(プロフ) - こんな感じの夢主さん、好きです♪続き楽しみにしてます、頑張ってください(o^^o) (2018年11月1日 19時) (レス) id: 2f089d0de5 (このIDを非表示/違反報告)
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